データで見る最新アプリゲーム市場概況
(と、男性若年層トレンド)
貴志 和也
こんにちは!D2C Rの貴志です。
ここ数年、いよいよ成熟フェーズだと言われ続けているアプリゲーム市場。
実際、データで見るとどのような変化が起こっているのでしょうか?
複数のデータから市場概況を整理してみたところ、いくつか興味深い傾向が出てきました。
本記事ではその中からいくつかトピックスをピックアップしてご紹介していきます。
今回分析したデータは、AppAnnie様の多大なるご協力をいただいています。
(いつも本当にありがとうございます!)
本記事内のデータは、参照元の記載がないものはすべてAppAnnieの調査データを基にしております。
目次
ユーザー数は横ばい、市場規模は微増
まずは前提として、マクロの数字を確認したいと思います。
ファミ通ゲーム白書によると、2018年の国内アプリゲームユーザーは2017年からほぼ横ばいの3,656万人。
すでに5~59歳の約半数がプレイしていると考えると、直近でこのユーザー数が大きく伸長することはなさそうです。
次に市場規模を見てみます。
AppAnnieモバイル市場年鑑2019によると、市場規模については引き続き成長傾向にありますが、他国と比較すると伸び幅の鈍化が見られます。
日本が成長していないというよりは、早期に成熟した日本のアプリゲーム市場に他国が追い付いてきた、ということかと思います。現在の日本の市場に国外ゲームタイトルが増えてきているのも、この他国の成長を如実に表しています。
ちなみに、2019年5月現在の日本アプリゲーム市場では、セールス上位30タイトルのうち、1/3にあたる10タイトルを国外ゲームが占めています。
2017年5月を振り返るとセールス上位30タイトル中、国外タイトルは5タイトル。この2年で実に2倍にまで増加しています。
市場規模は微増という中ですが、上記を踏まえると日本企業は以前と比較して厳しい状況にあると言えるかもしれません。
一人当たり接触アプリゲーム数は増加傾向?
ユーザー数が横ばいの状況でも、新たなゲームタイトルは続々リリースされています。
この激しい競争下で、ユーザーはいくつのゲームに接触しているのでしょうか?
また、その数は2017年と比較してどうなっているのでしょうか?
「月間アクティブユーザー数上位1,000タイトル」のMAU合計値を「延べMAU」とし、それを15~59歳の人口で割って「一人当たり接触タイトル数」を算出しました。
(人口については総務省統計局の『人口推計』を参照)
月間接触アプリゲーム数は、男性は3.6本、女性は2.9本
2019年5月現在、男性は3.6本、女性は2.9本のアプリゲームに接触しています。
2017年5月と比較すると、それぞれ伸長していることが分かります。
「市場規模の伸び率を上回る勢いで、ユーザーの接触するタイトル数が増加している」ということは、それだけ「ユーザーの接触時間/課金額が分散する」あるいは「プレイするタイトルを次から次に乗り換えている」といういずれかの状況に繋がります。
どちらの影響もありそうですが、ここ数年でリリースされたゲームのライフタイムが短くなってきている状況を鑑みるに、後者の影響がより強いように感じます。
つまり、ユーザーが新しいゲームを手に取ってみるハードルは下がっている一方、ファンとして定着させるハードルが上がっている、ということが言えそうです。
実際、ここ1~2年のアプリゲームのマーケティングは、「新規獲得」はもちろんのこと、ユーザーのエンゲージメントを高める「ファンマーケティング」の重要度が増しており、ゲーム内/外問わずユーザー体験を統合的に設計する施策が増加しています。
(この詳細については、事例を交えて次回以降の記事で書いていきたいと思います)
上記の通り増加する接触アプリ数ですが、性年代別ではどのような傾向があるのでしょうか。
接触アプリゲーム数は男性若年層がダントツで月間6.4本
性年代別に見ると、男女ともに16~24歳の若年層の接触アプリゲーム数がもっとも多く、特に男性若年層は6.4本と群を抜いています。
2017年も同様に男性若年層がもっとも多かったものの、そのときの接触数は4.4本で、この2年で約1.5倍にまで伸長しています。
(ちなみに最大の伸び率を示したのは男性45歳以上で、1.1本⇒1.8本で約1.7倍でした)
当月内に一度でも起動すれば接触カウントされるとはいえ、6.4本は想定よりかなり多い印象です。
どういうきっかけでこれほどのゲームをプレイしはじめ、またどのようなゲームをプレイしているのでしょうか?
このセグメントにフォーカスしてもう少し詳しく見ていきましょう。
男性若年層のキーワードは「Twitter、ゲーム実況、口コミ」「PvP」
多様な情報源からゲームをプレイ。特にTwitter、ゲーム実況動画、口コミの影響大
以下の表は、2018年に調査会社に依頼して取得した、「アプリゲームをダウンロードするきっかけ」に関するアンケート結果です。
各情報源について、もっとも影響を受けるセグメントをピンクで塗っています。
※年代区分が先ほどとやや異なる点についてはご容赦ください…!
ご覧の通り、全情報源について10代~20代の若年層がもっとも影響を受けており、Facebookを除くとすべての情報源について10代が一番影響を受けています。
情報感度が高く、情報の出どころを問わずに「面白そう」ならとりあえずプレイしてみる、という男性若年層のゲームへの向き合い方が見て取れます。
また、他年代と比較すると特に顕著なのが、「Twitter」「ゲーム実況動画」「口コミ」の影響です。中でも「Twitter」「ゲーム実況動画」についてはTVCMを上回るスコアとなっています。
上記のようなゲームのプレイきっかけを持つ若年層ですが、プレイするタイトルにはどのような傾向があるのでしょうか。
圧倒的PvPゲームユーザー!
男性若年層のプレイするタイトルについて調査した結果、他性年代セグメントと比較したときの最大の特徴は、PvPゲームユーザー率の高さです。
まず前提として、PvPゲームのユーザー数は全年齢的に増加傾向にあります。
以下は2017年5月以降のPvPゲームの延べMAU数の推移です。この2年で2倍以上に成長しています。
※調査対象:2017年5月ないし2019年5月のMAU上位30タイトルにランクインしているPvPゲーム
その中でも、男性若年層は他セグメントと比較して群を抜いてPvPゲームをアクティブに遊んでいることが分かりました。
※調査対象: 2019年5月のMAU上位30タイトルにランクインしているPvPゲーム
男性全体と比較すると、男性若年層のPvPゲームプレイ本数は約3倍。
少々乱暴ですが、重複利用を考慮せずに単純計算すると、10人中8~9人はPvPタイトルをプレイしているということもできます。
ここまでアクティブにPvPを遊んでいる背景には、オフラインで友人と過ごす可処分時間の長さがあると推測されます。
前述の「Twitter」「ゲーム実況動画」「口コミ」という特徴的な情報源をあわせると、男性若年層がアプリゲームにおいて重要視する点は、「友達と遊べる」「動画映えする」「話題になっている」というところにありそうです。
まとめ
成熟期に入り、競争が激化しているアプリゲーム市場。
接触タイトル数の増加から、新しいゲームに対する受容性の高まりが感じられる一方で、一度手に取ってもらったあとどれほどファン化を図れるか、という難しい局面に入っています。
このような状況下においては、ターゲットユーザーの正確な理解がより重要になってくると思います。
今回は、もっともアクティブにアプリゲームをプレイする男性若年層をピックアップし、情報感度の高さとPvP志向の強さについて分析しました。
今回ご紹介しきれなかったデータも非常にたくさんありますので、ご興味ございましたらぜひご連絡ください。
D2C Rは、ターゲットの詳細な分析と、ファンを生み出すコミュニケーション設計を通じて、マーケティング領域から今後もゲーム会社様を支援してまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
株式会社D2C Rは、アプリ・Web配信企業やコンテンツプロバイダをはじめとする広告主のニーズにマッチした、効果的な広告の開発・提供を行うデジタルマーケティング会社です。
D2C Rでは、企業が提供する良質なコンテンツやサービスに関する情報を、より多くの生活者に届けることを通じて、生活者の生活をより豊かにします。また、モバイルコンテンツ市場の健全な発展に寄与すべく、安心かつ効果的なデジタルマーケティングサービスを提供しています。
お問い合わせはこちら
営業本部シニアマネジャー 兼ストラテジックプランニングチームリーダー 2011年D2C入社、営業を行うかたわら、担当顧客の内部データ分析に従事。2013年D2C R設立時より参画、以後プランニング領域から顧客のアプリマーケティングを支援。2018年にストラテジックプランニングチーム立ち上げ。