【2026年】Amazon広告とは? ~ROAS改善と売上最大化を実現する、戦略的運用手法5選~
みなさん、こんにちは。
EC市場が成熟し競争が激化する現在、多くのブランドにとってAmazonは単なる販売チャネルではなく、最重要のマーケティングプラットフォームとなっています。その中で、確実な売上成長の鍵を握るのが「Amazon広告」です。
しかし、運用の現場では「とりあえず出稿はしているが、思うようにROAS(費用対効果)が伸びない」「競合が増えてクリック単価が高騰している」と悩む担当者も少なくありません。
今回は、Amazon広告の基本的な仕組みや種類の解説から、最新トレンドを踏まえた「ROAS改善と売上最大化を実現する5つの戦略的運用手法」までを詳しく解説します。仕組みと戦略を正しく理解することで、広告費の無駄をなくし、競合に打ち勝つための最適な運用ができるようになります。
Amazonでの売上を次のステージへ引き上げたいマーケターの方は必見の内容です。
ぜひ最後までお読みください。
目次
Amazon広告(Amazon Ads)とは? 仕組みと市場価値
もはやAmazon広告は、単なる「通販サイトの一機能」ではありません。世界的なECシフトに加え、GoogleやMeta(Facebook/Instagram)に次ぐ「第3のデジタル広告媒体」として、マーケティング戦略に欠かせないインフラとしての地位を確立しています。
Amazon広告の最大の特徴は、「巨大なECプラットフォームの内部で、購買直結のユーザーにアプローチできる」という点に尽きます。商品を探しているユーザーの目の前に、自然な形で商品を陳列できる、このシンプルかつ強力な仕組みこそが、多くの企業がAmazon広告に予算を投下し続ける理由です。
まずは、その基本的な仕組みと、なぜこれほどまでに市場価値が高いのかを本記事では紐解いていきます。
Amazon広告が表示される場所と仕組み(クリック課金型)
Amazon広告の多くは、ユーザーが検索したキーワードや閲覧している商品に関連して表示されます。もっとも目にする機会が多いのは、検索結果一覧の中に表示される「スポンサー」というタグがついた商品です。
主な掲載場所は以下の通りです。
- 検索結果ページ: 最上部、検索結果の途中、最下部など
- 商品詳細ページ: カートボックスの下、商品情報欄の近くなど
これらは、ユーザーの買い物体験を阻害しないよう、自然な検索結果(オーガニック)に馴染むデザインで表示されます。そのため、ユーザーは「広告を見せられている」というストレスを感じにくく、クリック率が高くなる傾向にあります。
【課金モデルは「クリック課金型(CPC)」】
基本的な仕組みはGoogleのリスティング広告と同様で、広告が表示されただけでは費用は発生しません。ユーザーが興味を持ち、広告をクリックして商品ページに遷移した時点ではじめて課金される「クリック課金(PPC)」方式を採用しています。 入札単価(クリック1回に払える上限額)と、広告の品質(関連性や過去の実績)によって掲載順位が決まるオークション形式ですが、少額予算からでもスタートできるため、大手ブランドから中小セラーまで幅広く利用されています。

画像引用元:https://sell.amazon.co.jp/learn/brand-register
Google広告・SNS広告との決定的な違い
「Google広告やSNS広告と何が違うのか?」という問いに対する答えは、ユーザーの「心理状態(インテント)」の違いにあります。
- Google広告(検索): 「知りたい」「行きたい」「比較したい」という情報収集の意図が強い。
- SNS広告: 友人との交流や暇つぶしなど、受動的な閲覧状態。
- Amazon広告: 「欲しい」「買いたい」「価格を知りたい」という購買意図(パーチェスインテント)が明確。
例えば、「ランニングシューズ」と検索する際、Googleであれば「選び方」や「おすすめ記事」を探している可能性がありますが、Amazonで検索しているユーザーは「今すぐ買うための商品」を探しています。
つまり、Amazon広告は「レジの前に並んでいる客」に商品を差し出すようなものです。そのため、他の広告媒体と比較しても、CVR(コンバージョン率)が圧倒的に高く、費用対効果が出やすいのが決定的な違いと言えます。
2026年最新:クッキーレス時代における「1st Party Data」の強み
近年、マーケターを悩ませているのが、プライバシー保護強化による「サードパーティクッキー(3rd Party Cookie)の廃止」です。これにより、従来のようなリターゲティング広告(一度サイトを訪れた人を追跡する広告)の精度が落ち、多くの媒体で獲得効率が悪化しています。
しかし、Amazon広告はこの逆風をものともしません。なぜなら、Amazonは「自社サイト内での膨大な実購買データ(1st Party Data)」を持っているからです。
- 「過去に何を買ったか」
- 「どのカテゴリを頻繁に見ているか」
- 「プライム会員かどうか」
これらは「推測」ではなく「事実」に基づいたデータです。クッキーに依存せず、Amazonという巨大な経済圏(ウォールドガーデン)の中で、確実なデータに基づいてターゲティングができる点こそ、2026年以降のデジタルマーケティングにおいてAmazon広告が「最強」と言われる所以です。
外部環境の変化に左右されず、濃いユーザーにピンポイントで訴求できるこの強みは、今後の広告戦略において大きな武器となるはずです。
Amazon広告の主な3種類と特徴・使い分け
Amazon広告を運用する際、最も重要なのは「目的」に合わせて適切な広告タイプを選ぶことです。
Amazon広告コンソール(管理画面)で扱える広告は、大きく分けて「スポンサープロダクト」「スポンサーブランド」「ディスプレイ」の3種類があります。これらは単独で使うものではなく、サッカーチームのようにそれぞれの「役割」を理解し、組み合わせることで最大の成果を発揮します。
どの広告が自分の課題に適しているか、まずは以下の比較表で全体像を掴んでおきましょう。
【Amazon広告 3種の比較・使い分け表】
| 広告タイプ | ターゲット層 | 主な目的 | 掲載場所 |
| スポンサープロダクト | 顕在層 | 売上の最大化 (カート獲得) | 検索結果、 商品ページ |
| スポンサーブランド | 検討層~顕在層 | ブランド認知 指名検索の獲得 | 検索結果最上部(TOP)、検索内 |
| ディスプレイ | 潜在層~リタゲ | リターゲティング 他社商品からの奪取 | 商品ページ(カート下)、Amazon外 |
これら3つの特徴を、実際の活用シーンを交えて深掘りします。
スポンサープロダクト広告:売上の基盤を作る
Amazon運用において「エース」と呼べる存在が、このスポンサープロダクト広告です。 Amazon全体の広告売上の大部分を占めており、初心者から年商数億円規模の上級セラーまで、「スポンサープロダクト広告を使っていないアカウントは存在しない」と言っても過言ではありません。
【特徴と役割】 見た目は通常の検索結果(オーガニック)とほぼ同じです。ユーザーが検索したキーワードに対して、ダイレクトに自社商品を表示させることができます。 最大の強みは、「今すぐ買いたい客」に最も近い場所へ出せること。クリックしたユーザーはそのまま商品詳細ページへ飛び、購入(コンバージョン)に至る確率が非常に高いため、売上のベースを作るには必須の広告です。
オート(自動)ターゲティングを使えば、Amazonのシステムが自動で関連性の高いキーワードや商品ページに露出してくれるため、キーワード選定に自信がない段階でもスタートを切ることができます。

画像引用元:
https://advertising.amazon.com/solutions/products/sponsored-products?ref_=a20m_us_p_all_sp
スポンサーブランド広告:指名検索とブランド認知
ユーザーが特定の商品カテゴリを検索した際、検索結果の「最上部(ヘッダー部分)」にデカデカと表示されるのがスポンサーブランド広告です。 以前は「ヘッドライン検索広告」と呼ばれていた通り、ファーストビューを独占できるため、圧倒的な視認性を誇ります。
【特徴と役割】
スポンサープロダクト広告が「商品」を売るのに対し、スポンサーブランド広告は「ブランド」を売るための広告です。 ロゴ、キャッチコピー、そして商品を最大3つまで同時に表示できるため、「このブランドにはこんなラインナップがあるんだ」と認知させるのに最適です。
また、近年のトレンドとして外せないのが「動画広告(スポンサーブランド動画)」です。 検索結果の中に自動再生される動画を表示させる手法で、静止画よりもクリック率(CTR)が格段に高い傾向にあります。スマホでの閲覧が主流の現在、指止まりの良い動画クリエイティブを用意できるかどうかが、競合との差をつける鍵となります。 クリック後の遷移先として、商品ページだけでなく「Amazonストア(ブランド専用ページ)」を設定できるのも大きなメリットです。

画像引用元:
https://advertising.amazon.com/solutions/products/sponsored-brands?ref_=a20m_us_p_all_sb
ディスプレイ広告:リターゲティングと潜在層
スポンサープロダクト広告やスポンサーブランド広告が「検索キーワード」に対して広告を出すのに対し、ディスプレイ広告は「人(閲覧行動)」や「商品」に対してターゲティングを行います。
【特徴と役割】
ディスプレイ広告の真骨頂は、Amazon内での「リターゲティング(リマーケティング)」です。 「一度自社の商品ページを見たけれど、買わずに離脱した人」や「競合他社の商品を見ている人」を追跡し、商品詳細ページのカートボタン下や、レビュー欄の近くに広告を表示させることができます。
さらに、Amazonの外部サイト(Twitchや提携メディア)を見ているユーザーにも配信が可能です。 「検索はしていないけれど、興味がありそうな層(潜在層)」にアプローチできるため、検索ボリュームの上限に突き当たった際、さらなる売上拡大を狙うための「攻めの一手」として重宝します。
参照ページ:https://advertising.amazon.com/ja-jp/solutions/products/sponsored-display
【参考】Amazon DSPとは(コンソール広告との違い)
最後に、「Amazon DSP(Demand Side Platform)」にも触れておきます。 前述の3つは「スポンサー広告(広告コンソール)」と呼ばれ、誰でも管理画面から設定できるクリック課金型広告ですが、DSPはそれとは別物です。
Amazon DSPは、主にインプレッション課金(CPM)で、Amazonの膨大な顧客データを活用して、Amazon以外のWebサイトやアプリに動画やバナーを配信する仕組みです。 「まだAmazonで検索すらしていない層」への認知拡大や、より高度なブランディングを行いたい大手企業向けのメニューであり、通常は代理店経由や高額な最低出稿額が必要となるケースが多いため、「次のステップ」として頭の片隅に置いてもらえたら十分です。
参照ページ:https://advertising.amazon.com/solutions/products/amazon-dsp?ref_=a20m_us_p_da_p_dsp
運用前に知っておくべき費用と重要指標(KPI)
Amazon広告を始める際、広告運用のスキル以上に重要なのが「数字の設計」です。 どれだけ優れたクリエイティブを作っても、利益構造を無視した入札を行えば、売れば売るほど赤字になる「広告貧乏」に陥ってしまいます。
逆に言えば、「いくらまでなら出せるか(撤退ライン)」と「追うべき指標(KPI)」さえ明確になっていれば、Amazon広告は決して怖いものではありません。ここでは、運用担当者が必ず押さえておくべきお金のルールを解説します。
課金方式と費用の目安(オークション制)
Amazon広告(スポンサー広告)は、基本的に「クリック課金制(CPC)」です。 広告が表示された回数(インプレッション)ではなく、ユーザーが広告をクリックした回数分だけ費用が発生します。
費用が決まる仕組みは「オークション形式」です。 「このキーワードで表示させたい」と考えるセラー同士が入札を行い、入札額の高さと広告の関連性(品質スコアのようなもの)によって掲載順位が決まります。
【費用の相場感】 「いくらかかるのか?」は商材やカテゴリによって大きく異なりますが、2026年現在の一般的な目安としては以下の通りです。
- クリック単価(CPC): 平均 50円〜150円程度
- 競合が少ないニッチ商材:10円〜30円
- 激戦区(サプリ、コスメ、ガジェット):200円〜500円以上になることも
- 1日あたりの予算: 500円〜1,000円からスタート可能
まずは無理のない日予算(例えば1日2,000円など)を設定しておけば、その金額に達した時点でその日の配信は自動停止するため、知らない間に高額請求が来るといった事故は防げます。まずは少額でテストし、「売れる」と分かったキーワードに予算を寄せていくのが鉄則です。
ACoS(売上高広告費率)とROAS(広告費用対効果)の計算式
Webマーケティングでは一般的に「ROAS(ロアス)」が重視されますが、Amazonの世界では「ACoS(エーコス)」という独自の指標が共通言語となります。
管理画面でもACoSがメインで表示されるため、この2つの関係性を頭に叩き込んでおきましょう。実はこの2つ、見ている数字は同じで「視点」が逆なだけです。
- ACoS (Advertising Cost of Sales):売上に対して、広告費が何%かかったか(コスト視点)
- 計算式:広告費 ÷ 売上 × 100
- 目標:低いほうが良い
- ROAS (Return On Advertising Spend):広告費に対して、売上が何%回収できたか(リターン視点)
- 計算式:売上 ÷ 広告費 × 100
- 目標:高いほうが良い
【現場での使い分け】
「広告費を使いすぎていないか?」をチェックして守りを固める時はACoSを見ます。「この広告はどれくらい売上を作ったか?」と攻めを見る時はROASを見ます。 Amazonセラーの間では「ACoS 20%を切ったら優秀」といった会話が飛び交いますが、これはあくまで目安ですので、商材の利益率によって「正解」は異なります。
<ACoSとROASの計算式>
両指標とも「広告費」と「広告経由の売上」を用いて算出されますが、視点が逆になります。
| 指標 | 名称 | 計算式 | 意味 | 評価基準 |
| ACoS | Advertising Cost of Sales (広告売上高比率) | (広告費÷広告経由の売上)×100% | 売上高に占める広告費の割合 (費用効率) | 低いほど効率が良い |
| ROAS | Return On Advertising Spend(広告費用対効果) | (広告経由の売上÷広告費)×100% | 広告費1円あたりの売上(投資対効果) | 高いほど効率が高い |
例: 広告費に10万円を費やし、広告経由で50万円の売上があった場合
- ACoS: (10万円 ÷ 50万円) × 100% = 20%
- ROAS: (50万円 ÷ 10万円) × 100% = 500%
ROASは売上目標の達成度を可視化するのに適しており、キャンペーン施策や拡販フェーズで重視されます。
ACoSは費用対効果を重視した運用に用いられ、利益率を維持しながら広告の無駄を抑えたい場合などに活用されます。
両方の指標を確認することで、広告キャンペーンのパフォーマンスをより包括的に把握できます。一般的に、ACoSは低いほど、ROASは高いほど広告効果が良いと判断されます。
このように、両者は表裏一体の関係にあり、どちらの指標も理解することで、広告戦略の最適化に役立てることができます。
目標ACoSの決め方(損益分岐点ACoSの算出)
「目標ACoSは何%にすべきですか?」という質問への答えは、「あなたの商品の利益率によります」が正解です。 赤字を出さずに運用するためには、まず「損益分岐点ACoS(Break-even ACoS)」を把握する必要があります。
計算はシンプルです。 「損益分岐点ACoS ≒ 商品の粗利率(Amazon手数料を引いた後の利益率)」と考えてください。
【例:販売価格 3,000円の商品の場合】
- 原価+Amazon手数料などが 2,100円(コスト70%)
- 手元に残る利益が 900円(利益率30%)
この場合、利益率が30%なので、損益分岐点ACoSは「30%」となります。 広告費に売上の30%(900円)を使ってしまうと、利益はゼロ(トントン)です。
- ACoS 30% → 利益ゼロ(損益分岐点)
- ACoS 31%以上 → 赤字
- ACoS 29%以下 → 黒字
つまり、この商品の運用目標は「ACoS 30%以下」に設定する必要があります。 ただし、新商品発売直後などで「利益度外視でランキングを上げたい」という戦略的フェーズであれば、一時的に損益分岐点を超えて(赤字を掘って)出稿するという判断も、マーケターの腕の見せ所です。
参照ページ:https://advertising.amazon.com/ja-jp/library/guides/acos-advertising-cost-of-sales#1
ROAS改善と売上最大化を実現する、戦略的運用手法5選
基礎知識と数字の管理方法がわかったところで、いよいよ実践編です。 Amazon広告は「設定して終わり」ではありません。むしろ、そこからがスタートです。
多くのマーケターが陥るのが、「とりあえずオート(自動)で回しっぱなし」や「入札単価を上げるだけで消耗戦に参加する」というパターン。これでは資金力のある大手には勝てません。 ここでは、2026年の競争環境において、賢く、効率的に利益を出すための「攻めと守りの5つの鉄則」を公開します。
戦略1:オート(自動)からマニュアル(手動)への「検索語句移行」サイクル
Amazon広告で勝つための基本にして奥義と言えるのが、この「オートで探して、マニュアルで獲る」というサイクルです。
いきなり自分でキーワードを決めて「マニュアル運用」だけで戦うのは、地図を持たずに宝探しをするようなもの。まずはAmazonのアルゴリズムに任せて「オートターゲティング」を走らせます。これは広範囲に網を投げる「トロール漁」のようなイメージです。
【具体的な手順】
- オートキャンペーン稼働: まずは低めの予算でオートを回す。
- レポート分析: 「検索クエリレポート」をダウンロードし、実際に「コンバージョン(購入)が発生したキーワード」を特定する。これが「お宝キーワード」です。
- マニュアル移行: お宝キーワードを、別の「マニュアルキャンペーン」に登録し、高めの入札単価を設定する(一本釣りに切り替える)。
- 除外設定: 移行したキーワードは、オートキャンペーン側では「除外キーワード」に設定し、カニバリ(同士競合)を防ぐ。
このサイクルを回し続けることで、あなたの広告アカウントには「本当に売れるキーワード」だけが蓄積され、ROASは劇的に改善していきます。
戦略2:無駄なコストを徹底排除する「除外キーワード」設定
売上を増やす攻めと同じくらい重要なのが、「無駄金を止める」守りの戦略です。 ACoSが悪化している原因の9割は、「クリックされているのに、全く購入されていないキーワード」に予算を吸われていることにあります。
例えば、あなたが「高級革靴(10万円)」を販売しているとします。 もしユーザーが「革靴 激安」「革靴 修理」といったキーワードで検索してクリックしてきた場合、購入につながる確率は限りなくゼロでしょう。
こうした「意図がズレているクエリ」を定期的に見つけ出し、「除外キーワード(ネガティブターゲティング)」に登録してください。 「完全一致」や「フレーズ一致」で除外設定を行うことで、そのキーワードでは広告が表示されなくなります。無駄なクリックを減らすだけで、同じ予算でも「見込みのある客」に使える回数が増え、結果としてROASは向上します。
戦略3:競合の商品ページを狙い撃ちする「ASINターゲティング」
検索結果だけでなく、「ライバルの店舗(商品ページ)」の中で営業活動を行うという、極めて攻撃的かつ効果的な手法があります。それが「ASINターゲティング(商品ターゲティング)」です。
これは特定のキーワードではなく、特定の「商品(ASIN:アイシン:<Amazon Standard Item Number(Amazon標準商品番号)>」を指定して、そのページ内に広告を出す機能です。狙い目は以下の2パターンです。
- 「自社より価格が高い」商品: 「機能はほぼ同じなのに、こっちの方が安いですよ」とアピールできれば、価格に敏感なユーザーをごっそり奪えます。
- 「自社より評価(星)が低い」商品: 「その商品は星3つですが、うちは星4.5ですよ」という見せ方ができれば、不満を持っているユーザーの乗り換えを誘発できます。
競合調査を行い、自社が優位に立てる商品をリストアップして狙い撃ちしましょう。まさに「隣の芝生」を刈り取る戦略です。

戦略4:SEO(自然検索)と広告の「相乗効果」による棚取り戦略
「SEOで1位になったから、広告は止めてもいいですか?」 この質問への回答は、2026年の戦略上では「NO」です。
なぜなら、Amazonの検索結果ページは、PCでもスマホでも「ファーストビューの半分以上」が広告枠で埋め尽くされているからです。たとえSEOで1位でも、広告を出していなければ、ユーザーの目に入る前に競合の広告に奪われてしまうリスクがあります。
【面を支配する(棚取り)】
主力キーワードにおいては、「広告枠」と「自然検索枠」の両方を取りに行きましょう。 1ページ内に自社商品が2つ(広告とSEO)表示されれば、単純にクリックされる確率は2倍になり、その分だけ「競合が入り込む隙間」を排除できます。
また、広告で販売数を積み上げることは「販売実績」としてAmazonアルゴリズムに評価されるため、結果的に自然検索の順位アップにも貢献します。広告とSEOは両輪で回すのが正解です。
戦略5:CVRを高める「クリエイティブ最適化(動画・カスタム画像)」
最後に、クリックされた後の「転換率(CVR)」を高める、クリエイティブの話です。 これまでのAmazon広告は「商品画像(白背景)」がそのまま表示されるだけでしたが、今は違います。
特にスポンサーブランド広告や、一部のスポンサープロダクト広告では、「カスタム画像」や「動画」が設定可能です。 単に商品が置いてあるだけの画像よりも、「人が使っているシーン(ライフスタイル画像)」や「商品の魅力が5秒でわかる動画」の方が、ユーザーの指を止める力(アテンション)は圧倒的に強くなります。
言わずもがな、
- 商品のサイズ感がわかる画像
- 湯気が立っているシズル感のある画像
- 実際に動かしている動画 など・・・
これらを用意するだけで、クリック率(CTR)とコンバージョン率は跳ね上がります。2026年は「ただ出すだけ」の広告から「魅せて売る」広告への転換期です。ABテストを繰り返し、勝ちクリエイティブを見つけてください。
Amazon広告の始め方・アカウント開設ステップ
戦略と戦術が整ったら、あとは実際に手を動かすだけです。 「広告の管理画面」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、Amazon広告の導入ハードルは他の媒体(GoogleやMeta)に比べて非常に低く設計されています。
すでにAmazonで商品を販売しているセラー(出品者)であれば、面倒なタグ埋め込みや別アカウントの契約手続きはほぼ不要。「思い立ったその日に、最短5分で配信開始できる」のが大きなメリットです。
ここでは、最も一般的な「セラーセントラル」経由での手順と、つまづきやすい「審査」のポイントを解説します。
セラーセントラル/ベンダーセントラルでの設定手順
Amazonへの出品形態によって入り口が少し異なりますが、基本操作は同じです。
①セラー(大口出品者)の方
普段お使いの管理画面「セラーセントラル」から直接設定できます。 ※小口出品者は広告を利用できないため、大口への切り替えが必要です。
STEP 1: セラーセントラルにログイン。
STEP 2: メニューバーの「広告」タブから「広告キャンペーンマネージャー」をクリック。
STEP 3: 画面内にある黄色いボタン「キャンペーンを作成する」をクリック。
STEP 4: 先ほど解説した3種類(SP/SB/SD)から選び、商品と予算を登録してスタート。
②ベンダー(Amazonへの卸入業者)の方
「Amazon Advertising(広告コンソール)」という専用の管理画面を使用します。 ベンダーセントラルのIDでログインし、同様にキャンペーン作成へ進みます。
どちらの場合も、最初はクレジットカード情報の登録(広告費の支払い用)が必要になる場合がありますが、売上金から相殺(天引き)する設定にしておけば、キャッシュフローもスムーズです。
参照ページ:https://sellercentral.amazon.co.jp/
審査落ちを防ぐための注意点
Amazon広告には「審査(クリエイティブアクセプタンスポリシー)」があります。 設定してすぐに配信されるわけではなく、Amazon側のチェック(AIおよび目視)が入ります。ここで「掲載不可(審査落ち)」とならないよう、2026年現在、特に厳しく見られている3つのポイントを押さえておきましょう。
①「No.1」「世界初」などの最大級表現
客観的なデータ(調査機関の証明書など)を広告内に明記できない限り、「No.1」「最高」「唯一」といった表現はNGです。画像内に文字で入れるのもアウトです。
② ビフォーアフター画像(特に美容・健康系)
「使う前と、使った後」の比較画像は、Amazonでは原則禁止されています。「痩せた」「肌が白くなった」などを連想させる画像は、高確率で弾かれます。
③ 画像の品質と文字量 「画像が粗い(ピンボケ)」「画像内に文字が多すぎる」「切れている」といったクリエイティブも、ユーザー体験を損なうとして却下されます。特にメイン画像以外のカスタム画像を設定する際は、「スマホで見てもクリアに見えるか」を必ず確認してください。
審査は通常24時間〜72時間以内に完了します。セール直前になって「審査落ちで広告が出せない!」と焦らないよう、余裕を持って入稿しましょう。
| 項目 | NGクリエイティブ(審査落ち) | OKクリエイティブ(審査通過) |
| 表現の根拠 | 「No.1」「世界初」「絶対に痩せる」といった最上級表現や断定表現を、根拠なく使用している | 客観的な調査に基づいたデータ(例:〇〇社調べ3部門でNo.1)を明記し、根拠を示す。 |
| ビフォーアフター | 過度な加工や修正を施した、明らかに非現実的なビフォーアフター画像 | 過度な加工がなく、個人の感想であることを明記した自然な変化を示す画像、またはサービス利用者の声(体験談)として掲載する |
| 健康・医療 | 「このサプリで糖尿病が治る」「ガンが改善」など、医薬品的な効果・効能を謳う表現 | 「健康維持をサポート」「潤いのある生活を」など、予防や健康の維持・増進を目的とする表現 |
| ユーザーへの不快感 | ユーザーに不快感や恐怖心を与えるような、刺激的な画像や動画(例:身体の欠損、グロテスクな表現など) | 清潔感があり、ポジティブなイメージを与える画像や動画 |
| テキスト量 | 画像内テキストが過度に多く、広告本来の目的が見えにくい | 画像内のテキスト量を抑え、広告文(テキスト)で捕捉するなど、視認性を意識したデザイン |
| ランディングページ (LPとの整合性) | 広告クリエイティブの内容と、リンク先のLPの内容が一致しない(例:広告では無料と謳っているが、LPでは有料など) | 広告クリエイティブの内容と、リンク先のLPの内容が一致しており、ユーザーを欺くことがない |
| 個人情報の扱い | ユーザーのコンプレックスを刺激するような表現で、特定の個人をターゲットにしていると認識させる表現 | 特定の個人ではなく、一般的な悩みや課題に寄り添う表現 |
まとめ:データを味方につけ、利益の出るAmazon運用を
Amazon広告は、もはや「魔法の杖」ではありません。 ただ出稿すれば飛ぶように売れた牧歌的な時代は終わり、2026年は「データを味方につけ、戦略的に運用できるセラー」だけが利益を残せる時代です。
今日解説した「ACoS」や「ROAS」といった指標は、荒波を進むための羅針盤です。 「なんとなく予算を消化する」のではなく、「この1円は利益を生んでいるか?」を常に問いかけ、無駄な出費(穴の空いたバケツ)を塞ぎながら、売れる場所に投資を集中させてください。
まずは、基本中の基本である「スポンサープロダクト広告」のレポートを見ることから始めましょう。 そして、記事内で紹介した5つの戦略、特に「オートからマニュアルへの移行」や「除外キーワードの設定」を、一つずつで構いません、今日から試してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この記事が、貴社のAmazon広告への挑戦、そして事業の飛躍的な成長の一助となれば幸いです。
編集者
CANVAS編集部
編集者
CANVAS編集部
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