マス広告とデジタル広告をコピーの目線から紐解く。
浅見 駿一
はじめまして!クリエイティブプランナーの浅見と申します!
私は約1年ほど前にマス系の広告会社からデジタル系の広告会社であるD2C Rに転職をしました。
普段は静止画や動画(いわゆるバナー広告)の企画・制作をしていて、良い広告・コピーとはなんだろう?と日々頭を悩ませながら仕事をしています。
ところで、みなさんはマス広告とデジタル広告のコピーの違いを意識したことはありますでしょうか?
昨今、オンオフ統合マーケティングという言葉も出てくるようになってきており、以前のようにマス広告とデジタル広告を分けてコミュニケーション戦略を考えるのではなく、マスとデジタルを一気通貫して考える企業が増えてきました。
一方で、マスのやり方をデジタルに、デジタルのやり方をマスにというただの置き換えで広告を作ってしまい効果を発揮できなかったケースもよく目にします。マス広告とデジタル広告は、同じ広告だとしても媒体特性や、視聴者の態度も違うため、その点を考慮せずに進めてしまうとこのようなケースが起こってしまいます。
そのため、使用する媒体ごとにクリエイティブの表現などを調整していく必要があります。
本記事では私が専門とするコピーの視点からマス広告とデジタル広告の違いを解説し、どのようにコピーを書くべきかお話したいと思っています。
それでは、よろしくお願いいたします!
目次
マス広告とデジタル広告の違い
マス広告とは
マス広告とは、マスメディアと呼ばれるメディア「テレビ」「新聞」「ラジオ」「雑誌」に出稿している広告になります。
マス=大衆という意味があり、文字通り多くの人にメッセージを伝えることが可能になっています。
そのため、マス広告の主な目的は認知拡大になります。
多くの人に商品やブランドのことを伝えるために、コピーの表現は抽象的な表現になる傾向にあり、なにかいい言葉だなぁ、おもしろい言葉だなぁと心象に残るものを目指してコピーを書いていきます。
また、マス広告はコンテンツの合間に挟まっており、コンテンツを体験している途中で強制的に広告を見せることを想定しています。
例えば、TVCMは、最後に総括的なメッセージが入りますが、これは最後までTVCMを見てもらえる前提でつくられているからです。デジタルでこの構成にしてしまうと離脱の要因になることもあります。
コンテンツの合間に表示されるからこそ、コンテンツに負けないような印象に残るような表現をつくれるかが大きなポイントになります。そのため、言葉に新しさや発見、感情を揺さぶる要素=インパクトが必要になり、表現を突き詰めることが求められます。
デジタル広告とは
デジタル広告とは、Yahoo、GoogleなどのウェブサイトやTwitterをはじめとするSNSなどの中に表示される広告になります。
マス広告と違いデジタル広告は、広告表示後の行動データが取れるため、そのデータを活かしながらPDCAを回し、広告効果を改善していくことが可能です。
また、広告をクリックした後に購買サイトまですぐに遷移させることができます。
そのため、デジタル広告の目的は、データを活用しながら仮説を立て、ターゲットを行動させることになります。
行動させるためには具体的な言葉にすることや、思わず行動をしてしまうようなインサイトを突く言葉を目指してコピーを書いていきます。
またデジタル広告は、サイトやSNS上のスペースに表示されるため、ターゲットの意思でスキップすることが可能です。
スキップされないように自分に関係がある広告だなぁと感じさせ、目を留めさせることが大切なポイントになります。
例えば、デジタル広告の動画では、冒頭にコピーをもっていき、かつ「○○なあなたへ」と自分ごと化させるワードを入れることで、スキップさせない工夫をしています。
ターゲットのインサイトを分析して、ターゲットに合わせたオーダーメイドな言葉をつくることが求められます。
マス広告とデジタル広告の違い
上記をまとめると、下記図になります。
大きな違いとしては、マス広告は多くの人に見られる言葉にする必要があり、デジタル広告は特定の人が興味を持つ言葉にする必要があります。
これは、ターゲティングの有無が大きな要因になっています。コピーには、アイキャッチをするという大きな役割がありますが、同じコピーでもマス広告のコピーは、幅広い人が「あ、これは新しいな、ワクワクするな」という新奇性ある言葉になっている必要があり、デジタル広告のコピーは、ターゲットにとって「おっ!これは気になる!、興味ある!」となるような自分に関係がある情報になっている必要があります。ターゲットにとって有益な情報になっているか制作者自身には判断が難しいですが、デジタル広告はマス広告に比べ費用が圧倒的に安く、すぐに入稿できるため、制作→入稿→修正→入稿とPDCAを素早く回して試していくことが大切になります。
具体的にコピーはどのように書くのか
それでは、マス広告とデジタル広告の違いが分かったところで具体的にどのようにコピーを書くか説明します。
マス広告のコピー
マス広告のコピーは、先ほどインパクトが大事と述べましたが、どのようにするとそういった言葉が書けるのでしょうか。
発想のヒントとなるTipsと事例を下記にまとめてみました。
・言葉の組み合わせを考える
ex)「人間まるだし。」(引用:全裸監督/Netflix)
コピーは、言葉と言葉の組み合わせでできています。言葉の組み合わせを工夫することで、見たことがない言葉になり、インパクトが生まれやすくなります。事例の「人間まるだし。」というコピーは特にそれがうまく、くっつきそうでくっつかなかった「人間」と「まるだし」という言葉を組み合わせることでインパクトがある言葉へと繋がっています。また、全裸監督というテーマ性を表す表現として最適な言葉であることから共感も生まれています。商品の周りにある単語をすべて書いて、パズルのように組み合わせていくような手順でつくると良いでしょう。
・真逆の言葉を入れる
ex)昼の大失敗は、夜の大笑い。(引用:五明)
コピーに真逆の言葉・概念を入れることで落差をつくり、インパクトを生む手法です。
”夜に大笑いする楽しい場所”ということを強調させるために、前半に昼の大失敗というマイナスなワードを入れています。また事例のコピーは居酒屋の広告になるので、確かに”居酒屋って失敗を笑いに変える場所”だよなと新たな視点を生活者に伝え、発見を生み出すことができています。
こちらは商品の周りにあることを連想し、ポイントとなる言葉を決めたら逆のことを探していくような手順でつくると良いでしょう。
・視点を入れ変える
ex)おしりだって、洗ってほしい。(引用:ウォシュレット/TOTO)
商品を意外性がある人物(物は擬人化する)に語らせることで、インパクトを生む手法です。
事例のコピーは、広告コピーの名作と呼ばれ知っている方も多いと思いますが、手や顔と同じようにおしりも水で洗う必要性をおしりに話者をズラして伝えることで、インパクトある表現にしています。こちらは商品の周りに関連する人・ものを連想し、誰が喋ったら面白くなるか探していくと良いでしょう。TOTOさんはその後、菌目線でも広告を制作していました。
上記のTipsなどを活用しながら言葉を発想し、これだ!という1本を生み出すことを目指していきます。
他にもたくさんのTipsがあるので、名作広告を紐解きながら自分の中にストックを溜めていくことが大切です。
デジタル広告の書き方
デジタル広告のコピーは、ターゲットに寄り添うことが大切だと先ほど述べました。
マス広告のように言葉のアイディアを発想するというよりもオーダーメイドのようにコピーをターゲットに合わせてつくっていくイメージになります。ターゲットの情報を下記Tipsの型に当てはめて考えると反応が良いコピーになります。
・ターゲットの住んでいる地域や年齢を入れる
ex)○○(地域名)に住んでいるあなたへ!
デジタル広告の特長であるターゲティングを活かし、広告を見ているユーザーの住んでいる地域や年齢をコピーに入れ込み、驚きをつくる手法です。配信するターゲットに合わせた言葉をコピーに入れ込んでいくことが大事になります。そうすることで、近所に自分が求めていたお店やサービスがあったんだ!と自分が求めていた情報だと思ってもらえるので、離脱防止やクリックといった結果に繋げることができます。
・Before→After
ex)勉強嫌いな息子が、進んで勉強するようになるなんて!?
商品が解決できる悩みをコピーに入れ込み興味をひく手法です。
特に変化を提示することで商品・サービスが持つ価値を具体的にイメージしやすく興味を誘うことができます。
上手なBefore→Afterをつくるには、いまターゲットは何に悩んでいるかインサイトに寄り添う必要があるのと、商品がつくれる未来(ベネフィット)を突き詰めていく必要があります。
また、2分割で変化の対比を入れたり、前後を誇張して強く表現するなどビジュアルをおもしろくすることがしやすいため、広告を作るうえで使いやすい型ともいえます。
・口語体で呼びかけて親しみある表現にする。
ex)○○を試してみない?
デジタルならではの距離感の近さを活かした手法です。
ネットは、市民のメディアとも言われるため、目線としては下からもしくは、同じくらいの視線で話すことが重要とされています。口語体にすることで、口コミっぽくなりおもわず気になってしまう効果や、「これで私は合格したよ♪」などエピソード形式にすることで商品を使用した時のストーリーを頭の中で想像させ、興味をひくことができる型です。
また、そういったストーリーを遷移先で展開していくといった手法もあるでしょう。
デジタルのコピーは、ターゲットの情報+コピーの型を組み合わせて適切なコピーをつくることが重要になります。そのためには、PDCAを積極的に回し反応がいいクリエイティブの型と、日頃からのターゲットの分析をおこない、自分なりのナレッジを溜めていくことが大切になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
簡単にではありますが、マス広告とデジタル広告の違いと具体的なコピーの書き方をまとめてみました。
もし、「デジタルもマスも書き分けられるコピーライターを探している」、「デジタル、マスどちらから手をつけて良いかわからないから相談に乗ってほしい」などお困りの際は、ぜひ弊社にご相談して頂けたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
統合プランニング本部クリエイティブ部所属。食品系ハウスエージェンシー(営業)、独立系代理店(クリエイティブ)を経て現職。愛と勇気をもって日々業務にあたっている。最近は、漬物をつくることにハマり中。