「恋愛ゲーム×クリエイティブ」で抑えるべき3つのポイント
北澤 康成
【CreatorZine転載分】
クリエイティブプランナーの北澤康成です。
前回の記事では「B to B運用型広告」にスポットを当て、クリエイティブ制作のパターンについてお届けいたしました。
今回は新たに「恋愛ゲーム×クリエイティブ」に焦点を当て、広告表現として重要視すべき3つのポイントについて解説いたします。特に今回は、SNSで配信されるクリエイティブのケース、という点に絞りお話させていただければと思います。
シンプルにまとめる
SNS上では日夜非常に多くの「情報」が流れています。
その情報には広告はもちろんのこと、一般のユーザーの方々からの発信も含まれます。
情報の波が日々押し寄せているといっても過言ではないこの現代社会で、SNS上の1つの広告が見られる時間はせいぜい数秒。もしかすると、1秒未満かもしれません。
恋愛ゲームの広告であっても例外ではなく、ただ魅力的なキャラがいる、ということを広告で伝えるだけではもはや見向きもされずに終わってしまうでしょう。
その中でどうしたら彼らの魅力を最大限に伝え、膨大な情報の中から「これだ!」と思ってもらうことができるのでしょうか?
「ただ、こんなキャラがいる、ということを伝えても埋もれてしまう」
「と、するならばアピールするべき要素をたくさん伝えればよいのでは?」
それも正解になると思いますが、非常に注意すべきポイントがあります。
それは、「伝える内容が多過ぎても、ユーザーの心には響かない」ということ。
インセンティブ、キャラクターの多さ、キャラの属性、声優……
そういった魅力はゲームを構成する要素であり、ユーザーの興味を惹くためには欠かせないものとなっています。
ですが、単純にそれらを入れ込み広告を作るだけでは、
「なんか色々ありそうだけど、よくわからないな」
「こういうの、よくありがちなゲームだな」
といったように、「自分とは関係のないもの」「他と何も変わらないもの」というように認識されてしまい、あっさりスルーされてしまいます。
「自分と関係あるもの」「他とは何か違うもの」であることを認識させ、ユーザーの目を留まらせるためにはむしろ、伝えたい内容を絞り、「明確なメッセージ」を広告に載せて伝えていく必要があります。
・ゲームに登場するキャラならではの性格や一面
・ゲームならではのオリジナル要素や雰囲気
・ゲームを始めることのメリット
こうした要素の中で今回は「これ」というものを絞り、ユーザーの感情や実際の声を基に、どういった表現を使えば伝えたい1つのメッセージが伝わるか、ということを考える。その上で作成することで、数多の情報の渦の中でも流されないよう、適切に誘導できるのです。
特に恋愛ゲームという特性でいうと「直感的に良い」と思われることが、他の商材よりも重要です。
恋愛ゲームとは文字通り、好きなキャラと恋愛を楽しむもの。直感的に「このキャラとこんな恋を楽しみたいな」「なんかわからないけど、この物語にときめく」という感情が根幹にありゲームを楽しむユーザーが多いので、そうした直感的な良さを広告でも重きを置くことで、恋愛ゲームと親和性のより高いユーザーの琴線に触れやすくなり、獲得効率も上がっていくといえるのです。
ユーザーに寄り添う
続いての大事なポイントは、「ユーザーに寄り添う」こと。
先ほどは、ユーザーの興味を惹くように、ユーザーを迷わせないように「シンプルに伝える」ことを伝えましたが、今回のポイントはその発展形とも言えます。
まず、ここでいう「ユーザーに寄り添う」とはどういうことか。
それは「ユーザーの心に何かポジティブな変化を導く」ということに他なりません。
先ほども述べさせていただきましたが、SNS上では日夜膨大な情報が飛び交っています。
その中にはセンセーショナルなものや、ある種のネガティブな感情を呼び起こすものも少なくありません。
そんな中で「ポジティブな変化を導くもの」、つまり「自分に寄り添ってくれるもの」は、ぬくもりを潜在的に求める心に非常に深く響き、大きな共感や興味を導きます。
具体的に、ただキャラクターをテキストで紹介した広告(A)と、広告を見ている人を思いやるようなセリフやテキストがある広告(B)を比較してみましょう。
比較してみると、(A)の広告の方は、要素がシンプルでキャラクター性も伝わりますが、「あ、こんなキャラがいるのね」というところで深い共感や興味につながらないユーザーも少ないと考えられます。そのキャラクターの特徴、性格にピンとくる人でしたら、この絵面を見ただけで興味を抱くかもしれません。しかし、そうでない人々にとっては、特徴や性格がフックにならず、スルーされてしまう可能性が高いでしょう。
一方、(B)の広告に関しては、はっきりとこれを見ている人へのメッセージであることが分かり、なおかつその内容も刺激的なものではなく、キャラクター性を損なうことなく、心にそっと寄り添うものになっています。
すると、キャラクターの性格や特徴に元々興味が薄かった層であったとしても、
「この人の言うこと、なんか気になる」
「広告だけど、イイこと言ってくれたな」
と、心の琴線に触れ、そこから興味を抱きゲームをプレイする可能性が高まるのです。
特に恋愛ゲームというコンテンツにおいては、こうした「寄り添い」「心が温かくなる」という性質が重要です。ゲームでしか味わえないドラマティックな恋愛や大人な恋を求めていたとしても、そこの根本には「心が温かく満たされる感覚」が重要であり、そうしたものを求めるユーザーとの親和性が高い、という意味でも「広告で寄り添う」という姿勢が大切になっていきます。
拡散性に注目
最後のポイントは「拡散性」に注目することです。
SNSの広告で拡散性に着目する、というのは極めて当たり前の話であり、今更説明するほどではない……と思われる方もいるかもしれません。
ですが、当たり前のことであるからこそ決して軽視してはいけない要素であり、なおかつ細心の注意を払って取り扱うべき要素でもあるのです。
拡散の方法といえば単純なプレゼント企画やチャレンジ企画を行うのももちろん有用ですが、そうした施策が打てない場合はどうすればよいでしょうか?
もっともシンプルな方法は、「この広告、もっといろんな人に見て欲しい」と思わせることです。
・あまりにもくだらなくて笑えるからみんなに見て欲しい
・自分の好みにぴったりハマるキャラがいるから見て欲しい
・自分がすごく感動したから見て欲しい
こうした「自分の感情が揺さぶれた体験を、誰かにも味わってほしい」という思いを呼び起こすような工夫を広告内でこらす必要があるのです。
そうした工夫を凝らすには、やはりユーザーにとっての「驚き」あるいは「共感」を呼び起こすことがマストであるといえます。
「驚き」と「共感」は、ユーザーの「行動」を動力源。
広告をクリックする事、ゲームをプレイする事はもちろん、広告を拡散する、という行動を引き起こすためのトリガーとなります。
例えばお笑いの「あるある」ネタですが、今や「あるあるネタ」というフォーマットは広く認知され定番ネタとなっていると思います。そこには、下記の「驚き」と「共感」が詰まっているからであるといえるのです。
・「まさかそんな日常の何気ないところをわざわざピックアップするとは!」という驚き
・「ああ、確かに自分にも覚えがあるな」という共感
予想を超えられた意外性と、自分事としてとらえられる共感性、つまり、驚きと共感をシンプルに、かつ強く味わえるネタだからこそ、ここまで多くの人に支持されてきたと分析できます。
更に、こうしたネタは広く真似されたり話題にされる、つまり「拡散性」も高いといえ、やはり「驚き」や「共感」が拡散において大切な要素となることを裏付けているといえます。
特に恋愛ゲームにおいては、「自分の想像を超えるときめき(驚き)を味わいたい」という感情や「自分が慣れ親しんだ好みのキャラとシチュエーションを楽しみたい(共感)」という感情がユーザーの根底にあります。
特に驚きや共感を重視するユーザーの多いコンテンツだからこそ、広告でそうした感情を想起させることで、ゲームそのものへの興味関心を引き起こしたり、「これをもっと皆に知ってほしい」といった行動を導くことができるのです。
恋愛ゲームにも「驚き」や「共感」を盛り込むための手法としては、下記のようなものが挙げられます。
・ユーザーたちならだいたいわかる共通言語や流行のワードを入れる
・あえてキャラクターにメタ的な視点でのセリフを言わせる
・問いかけや語りかけ、を通してユーザーにハッと気づきを与えていく
こうした、ユーザーが思わず自分から拡散をしたくなるような要素を盛り込みつつ、それを最大限魅力的に伝える表現を模索することが、広告やゲームそのものの認知や理解を深めるための一助となるのです。
特に「共通言語や流行のワードを入れる」については、ゲーム界隈、SNS界隈で流行している用語や構文を用いるのが効果的。
・「まさか広告で、こういうワードチョイスをするとは」という驚き
・「このワードはわかる」「自分たちのことをわかってる」という共感
上記のような驚きや共感を導きやすく、拡散を誘発するために特に効果的な手法といえます。例えば、「私のことが好き」といったネットミームが数年前に流行しましたが、そういったワード、ミームを想起させる要素を含ませると、上記のような驚きや共感を導きやすくなります。
注目が注目を呼び、更に多くの人が認知や理解を深める……という好循環を生み出していくためにも、特に「拡散性」を意識すると良いでしょう。
まとめ
今回は「恋愛ゲーム×クリエイティブ」という内容について解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
他ジャンルの広告制作を行う上でも応用できる要素でもあるため、ぜひ各ポイントについて改めて参考にしていただき、クリエイティブを制作する上での糧にしていただけますと幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2019年にD2C Rに入社。主にゲーム案件にてプランニングとディレクションを担当。 爬虫類飼育に本格的にハマり中。 相手の変化量を少しでも増やせるようなクリエイティブ制作に日々奮闘中。