【イベントレポート】先進事例に学ぶ音マーケティング成功の秘訣
久保 文奈
こんにちは。
クリエイティブプランナーの久保です。
8/4に弊社主催のウェビナー「先進事例に学ぶ音マーケティング成功の秘訣」が開催されました。
前回、満足度90%超と大変好評を頂いた音をテーマにしたウェビナーの第2弾です。
こちらの記事では、ウェビナーの内容をレポートいたします。
今回はゲストスピーカーに、株式会社オトナル代表取締役の八木太亮氏をお招きいたしました。
私は、最近よく「Spoon」の広告が当たります。(笑)
第1部では「企業価値を高める『音』の活用事例とそのヒント」と題し、『音』を軸にしたブランドコミュニケーションを中心に、
弊社クリエイティブプランナーの郡が紹介。
第2部では、株式会社オトナル代表取締役の八木太亮氏による「音声マーケティングコンテンツ 実践編」です。
音声メディアや音声コンテンツを深く掘り下げ、市場の概観とその背景について解説いただきました。
第3部では、いくつかテーマを設け、お二人のそれぞれの視点から各テーマに関するトークセッションを行っていただきました。
最近、注目されている『音』を活かしたマーケティングのヒントを探っていきましょう!
目次
スピーカー紹介
■ゲストスピーカー:八木太亮氏 Twitter:@pyusuke
株式会社オトナル代表取締役
2013年 株式会オトナルを創業。
ウェブメディア事業を事業売却ののち、音声コンテンツと音声広告領域に特化し、アドテクノロジーを活用した広告出稿と
クリエイティブ制作をトータルサポートできる”音声広告カンパニー”としてデジタル音声広告事業を展開。
■メインスピーカー:郡 茜
株式会社D2C R 統合プランニング本部
大学卒業後、広告業界に入りコピーライター・プランナー・CDとして一貫してクリエイティブに携わる。
2015年~個人事業主として動画マーケティング会社、アプリ支援会社、IT系企業等と契約。
ブランディング~獲得の両領域にて実績を上げる。
第71回広告電通賞WEBムービー部門最優秀賞受賞 2020年9月から現職。
■モデレーター:貴志 和也
株式会社D2C R 取締役 兼 統合プランニング本部 本部⾧ 兼 ストラテジックプランニング部 部⾧
2011年 株式会社D2C入社
2013年 株式会社D2C R立ち上げに参画
2020年 統合プランニング本部組成
2021年 D2C R 取締役就任
企業価値を高める『音』の活用事例とそのヒント(第1部)
弊社クリエイティブディレクターの郡が登壇、
『音』を軸にしたブランドコミュニケーションについて紹介いたしました。
『音』の市場が伸びてきている市場の背景として、音楽を聴く場所がオンラインに移行したことで、デジタルオーディオアドの収益も伸びてきています。
また、ストリーミング再生が7割を占めるようになり、限られた状況でしが視聴することができなかったラジオコンテンツが
「Spotify」などのクラウドサービスでも視聴できるようになったこともあり、改めて視聴者が増えてきているのではないでしょうか。
日本でも、海外に続きデジタル音声広告市場が伸びていくことが期待できそうです。
▼企業活動視点からの音の利点
大きく分けて、生活者側から見た利点と企業側から見た利点の2つがあります。
生活者のメリットと企業側のメリットが表裏一体のようになっているように見えますね。
なぜ、このような利点を音が持っているのかを見ていきましょう!
▼音はブランディング要素のひとつ
ブランド要素には、おなじみのロゴや色などがあります。
「Tiffany=ティファニーブルー」を想起するようなイメージです。
実は“音”もブランド要素に含まれます。
音はブランド構築にとって、とても重要な要素の一つなんですね。
▼音はコピーや映像より好感を醸成しやすい
▼音は資産になる
音は商標登録ができ、独占権が発生するのでビジネスにおいて優位に転じやすいのですね!
サウンド・ロゴ以外にも音は企業の価値を高めます。
これらの企業は音の持つ価値を重視していて経営資源を投下しています。
▼『音』は購買に影響する
実際にBGMを調整することで、売上を上げたスーパーマーケットの例です。
一般のスーパーマーケットで売上が32%も上げる施策なんてなかなか思いつきませんよね。
音を利用して、モノが売れる仕組みまで作ることができるなんて驚きです。
▼音は人間のメカニズム的にも優位
目に比べて速く届き、速く反応し、正しく情報を受け取ることができるのです。
オーディオコンテンツで、“ながら視聴”が可能なのは、聴覚の情報処理能力が高いことが影響しているのではないでしょうか?
▼メロディは記憶を促進させる
確かに、子供のころに見たCMの楽曲を商材を見ると思い出すことも多いです。
▼記憶に残る広告の多くには、音が使用されている
商品を見ても、ロゴは思い出せないがCMソングや代表的なコピーのサウンドが勝手に脳内再生されることがありますよね。
音を活用したコミュニケーションは、どこで存在しているのか?
筆者の独断と偏見で、面白いと思った事例を3つほどピックアップしてみました。
▼音声メディアでの活用
コロナ禍で外食ができないご時世に、自宅でペプシを楽しんでほしいという企業のメッセージです。
レシピの材料が実際に曲名になっており、最後にはペプシというタイトルの楽曲がはいっています。
楽曲という音を活用して、話題喚起やブランドに対する好感度を促進した事例です。
音声メディアでこのような企画があるとSNSでも話題になり、ユーザーが自主的にペプシを広めてくれるきっかけにもなりますよね!
▼自社メディアでの活用
エンジン音という音を活用し、ランボルギーニ好きのファンの心をくすぐり、ロイヤルティを高め、話題喚起を行っているような事例です。
私の友人に、ジェット機好きがいるのですがエンジン音を聞くだけで、ジェット機の機種を当てることができる人がいます。
コアファンにとって、ブランド側が積極的にこのようなコアなコンテンツを展開してくれると嬉しいですし、さらにそのブランドへ好意的な印象を持ちそうです。
▼SNSでの活用
ポテトを揚げる効果音を活用し、ブランドに対する興味関心を上げ、話題喚起を行っています。
確かに、あの音を聞くと食欲が刺激され、「マクドナルドのポテト食べたい…。」となってしまいます。
ああ、今も食べたくなってきました。(笑)
このように“音”は幅広いメディア・多くのシーンで生活者と繋がることができます。
“音”施策って実際どうやるの?
▼ヒント①音マター<課題マター>
これは、目的と手段を見失わないようにしなければならないということです。
「音を使った施策をしたい」から始まるのではなく、あくまで課題を見据えることが重要だということです。
▼ヒント②“音の原石”を探す
“音”の活用という視点だと、新しく作る音と既存の音を活用する2種類の考え方があります。
今回は後者のお話です。
“音”は身の回りにあふれています。
どの“音”を施策に落とし込むかを課題に沿って選ぶことが重要になってきます。
▼ヒント③“音の原石”を磨く
車やブロックなどはエンジン音、ブロックが崩れる音などプロダクト自体に音が存在します。
このような場合は、直接的にプロダクトが持っている“音の原石”にフィーチャーし、施策につなげることが可能です。
また、音のないプロダクトや実態のないサービスは間接的に“感情的要素”に注目し、その感情を擬音で表現するなどのアプローチがあります。
▼ヒント④ブランドに沿った“音”を作り出す
“音”には長期的な音、短期的な“音”があります。
これらの音はフェーズに分けて存在しているわけではなく、長期的な音をプラットフォームの施策内の音に活用し、トレンドフルな施策ができるのです。
先ほど、ご紹介したマクドナルドのポテトを揚げる音を「TikTok」のハッシュタグチャレンジに活用するなどがまさにその例ですね。
▼ヒント⑤適切な表現方法を探る
こちらはASMRという聴覚を動画という視覚で補完することで、五感にアプローチした事例を利用した事例です。
ASMRは機能性のアピールから情緒性のアピールまで幅広く使用することができます。
私自身、ASMRに対して料理の音や咀嚼音といった“物理的な音”をイメージしていたのですが、「人の声も活用することができるんだ」と新しい発見でした。
▼ヒント⑥生活者の態度を意識する
映像も音楽の“ながら視聴“が主流になっています。
私自身の自分の生活を振り返ってもわかるように、「YouTube」を見ながら他のSNSを見たり、漫画を読みながら音楽を聴いたりしています。
“ながら視聴”をしていてもユーザーの気を引くことができるクリエイティブが重要になってきています。
▼ヒント⑦ゴール設計の考え方
音の施策に関わらず、プロモーション全般に言えることですが、適切なKPI設計をすることで、施策が効果的だったかどうかを振り返ることができます。
まとめ
『音』を取り巻く市場は拡大しており、大きなビジネスチャンスになってきているようですね!
郡の話からは『音』が伸びていることはもちろん、生理的・科学的に効果がある『音』の影響力と『音』の活用方法のヒントを垣間見ることができました。
続いては、第2部です!
音声マーケティングコンテンツ 実践編(第2部)
第2部では、株式会社オトナル代表取締役の八木太亮氏が登壇。
日本国内で具体的に活用できる音声広告やポッドキャストを始めとした音声配信を活用した事例を交えながら、音のマーケティング活用の有用性など、より詳細なお話をしていただきました。
▼音声メディアと音声コンテンツについて
デジタル音声メディアとは、Webやスマートフォンなどで視聴できる音声コンテンツサービスやサイトのことです。
地上波ラジオはリアルタイムで特定の地域でしか、視聴することができませんがデジタル音声メディアならいつでもどこでも視聴することが可能です。
改めて見ると、デジタル音声メディアの豊富さに驚きます。
右側4つ(音声メディア、音楽配信サービス、音声配信プラットフォーム、ポッドキャスト)には、音声広告が出稿可能です。
下側3つ(音声配信プラットフォーム、ポッドキャスト、音声SNS)には、音声コンテンツを配信することが可能なので、企業さまも活用することができます。
▼音声コンテンツの市場規模と市場動向
日本だと急に「Clubhouse」が登場し、いきなり音声コンテンツが話題になったように見えますが、アメリカでは2016年から年20%前後で市場が成長しており、2020年はコロナの影響がありながら13%成長し、30億ドルに成長しています。
広告市場だけでなく、音声コンテンツを視聴するユーザーは年々成長しており、ポッドキャストの報道もピューリッツァー賞の受賞対象になっています。
これはインターネットの音声コンテンツもジャーナリズムであると認められていると示しているのではないでしょうか?
日本だとまだ実感は少ないですが、「Google」や「Netflix」、「Spotify」などの大手IT企業が音声コンテンツ市場へ本格参入を始め、音声メディアや音声コンテンツ業界が更なる成長を遂げようとしています。
引き続き音声広告への広告出稿も増えていくと考えられます。
▼デジタル音声広告の種類
インストリーム広告に含まれるポッドキャスト広告は、「YouTube」のインストリーム広告の音声版というイメージを持っていただけるとわかりやすいのではないでしょうか?
ポッドキャストの番組が始まる前や番組の途中、最後に音声広告が挿入され配信されます。
音声広告はスキップされる可能性が低く、完全再生数が高いのです。
広告価値の低いインプレッションによる配信数の請求が起きにくいのも企業さまにはメリットとなりますね。
たしかに、ながら視聴をしている際に、音声広告をわざわざスキップするためにデバイスを手に取り、スキップする作業を行うイメージはあまりないですね。
スキップできる仕組みだとしても、最後まで視聴してしまう気がします。
▼デジタル音声広告の4つのポイント
”ながら聴き”という聴き方はブランドへのエンゲージメントを高めるという結果が出ているそうです。
また、完全聴取率が90%を超え、配信した広告を確実にユーザーに届けることが可能になります。
ちなみに「YouTube」完全聴取率は20~30%ほどのようです。
ターゲティングに関しても、年齢性別などのターゲティングに追加し、ポッドキャストだと番組ごとにも出し分けができるので、
ユーザーの属性や趣味嗜好に対してのターゲティングによる広告配信ができ、効率よく届けたいユーザーに届けたい広告を届けられます。
聴取ユーザーのデータを活用し、ブランド認知調査を行い購買意欲が上がっているか、特定サイトへの訪問者数を計測し、興味関心を抱いているかなどを検証することができるので、次回の配信でどのように改善していくかなど運用の精度が高くなります。
▼オウンドメディアと音声コンテンツについて
サービスごとに配信スタイルが変化し、配信先は1つに選ばなければなりません。
ライブ配信したものを少し編集して、オンデマンドに配信したり、1つの配信先にアップしたものを横展開することで、工数を減らしながら色んな音声メディアに拡大してくことは可能そうです。
しかし、それぞれのメディアに対するユーザーの視聴態度やユーザー層は異なってくるので、適宜チューニングは必要になりそうです。
▼企業音声コンテンツの活用メリット
音声コンテンツは、リーチにとても強いわけではないので、どちらかというと既存顧客のロイヤリティ強化に有効だそうです。
また、“音”でしか伝えられない世界観や音声の方がわかりやすいようなコンテンツを配信することも鍵になってきます。
郡の事例紹介であったようなエンジン音に焦点を当てた施策などはまさに“音”でしか伝えられない企業さまの魅力ですよね。
音声コンテンツは、動画コンテンツより運用性しやすいのも特徴です。
動画を何本も用意するのは工数がかかりますが、音声コンテンツだと“音”のみを用意さえすれば制作ができるので、動画よりも工数が少ないのはご想像がつきますね。
オンデマンド型のプラットフォームに配信した場合は、ストックしたのちに自社メディアに読み込んでもいいですし、キャンペーンなどで活用することもできます。
“音”が何となく流行っているのはわかっているものの、市場の大きな概況や実際にどんなプラットフォームにどんなコンテンツが配信でき、企業側としてどのように活用していくのかについてとても参考になりました!
日本は広告市場に限らず、さまざまな産業においてアメリカの後追いで市場が大きくなっているので、今から音声広告市場に参入したり、参入の準備をしておくことが競合と一歩差をつけるキーになりそうですね。
トークセッション(第3部)
第3部では、いくつかテーマを設け、お二人のそれぞれの視点から各テーマに関するトークセッションを行っていただきました。
なぜ、いま“音”なのか?
所感ですが、“目”が奪いつくされてしまったからだと考えております。
また、世界規模的に“音”のインフラが整ってきていることもあり、プラットフォームの大きな変化が後押ししていると考えています。
また、パンデミックによりリモートワークなど在宅の時間が増え、生活者はTVや動画を視聴する時間が増えました。
パンデミックがなぜ“音”にとって後押しになっているかというとユーザーは“ながら視聴”で、映像は見ず、実際は耳で聞いているからです。なので、耳の需要が高まっていると考えています。
日本国内だと急にClubhouseが出てきたイメージがありますが、Clubhouseが出てくる前からデジタル音声コンテンツの需要は高まっています。
実際に米国のポッドキャストのリスナーは2014年から増加しています。
2016年ごろからAirPodsをはじめとするワイヤレスイヤホン、Amazon EchoやGoogle Homeなどスマートスピーカーなどのハードウェアもポッドキャストや音声メディアなどのプラットフォームも増加し、市場成長への土台が積み重なっています。
マネタイズもプラットフォームが整ってきたことで、音声コンテンツにおける広告ビジネスが成り立つようになりました。
総合的に、コンテンツ、ハードウェア、マネタイズがそろってきているので、“音”への注目が高まっていると考えています。
企業の“音”活用について
静止画や動画と異なり、ビジュアルで見せられない、プロダクトから音が出ないような悩みを抱えており、オーディオアドや音声コンテンツへの参入に対するハードルが高いと感じている企業さまも多いと思います。
その中でどんな活用方法があるのかお二人にお伺いしたいと思います。
最近の面白い事例だとIKEAが紙のカタログを廃止し、ウェブサイトと音声カタログに切り替えると発表しています。
カタログで行っていた商品のレコメンドを、“音”で行うという取り組みです。
紙から“音”にレコメンドをシフトし、視覚情報はウェブサイトで行うという思惑があるのではないでしょうか。
家庭内で掃除や洗濯をしながら、聴けるコンテンツになるのではないかと思っています。
生活者のライフスタイルに寄り添った音声コンテンツになりそうな取り組みです!
サウンド・アイデンティティも重要性が増してくると考えています。
“ながら視聴”になると企業のロゴは見なくなります。そうなると“音のロゴ”への需要が高まります。
2019年にマスターカードのロゴから「マスターカード」という文字を取り除き、サウンド・ロゴを発表しました。
アイデンティティとは、企業そのものを表すものです。生活者との一番コアな接点である“音”に注目し、ブランド体験を想像していく企業さまが増えていくのではないでしょうか?
“音”の市場がさらに成長していくと、企業ごとにサウンド・アイデンティティを持つ時代が当たり前になるかもしれないですね!インテルの「インテル入ってる」やマクドナルドでおなじみフレーズになっている「I’m Lovin’ It」など覚えやすいメロディで音によってブランドやそのイメージを想起させるのは実体験から思い返しても、その効果を実感できるのではないでしょうか?
まとめ
弊社、郡が担当するパートでは、『音』を取り巻く市場は拡大している背景や人間の生理的・科学的なアプローチによる『音』の影響力や企業さまが『音』を活用する方法のヒントを垣間見ることができたのではないでしょうか?
また、八木氏のお話からは音声市場のハード面、ソフト面が整ってきていることによる、今後の日本市場での音声コンテンツへの成長が期待できるのではないかと改めて感じることができました。
今後、オーディオアドへの遅れをとらないためにも、私自身オーディオアドへの知見を増やし、クライアントさまにとって効果的で有効な提案ができるように日々情報収集を行っていきたいと思います!
D2C Rでも積極的に提案を行っていきたいですね!
また、今回は音マーケティングの中でもオーディオアドが中心のお話でしたが、D2C Rでは『音』にまつわる、広告、技術、サービス、コンテンツと、あらゆる『音』を活用したマーケティングに力を入れております。クライアントさまの課題解決につながるような、『音』の提案や発信をこれからも続けてまいりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!
以上、潜入リポートでした!
今後も音声コンテンツは市場が成長していくと予想できるので、音声市場への動向やトレンドに注目ですね!
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今年入社した新卒1年目のクリエイティブプランナー。 「TikTokといえば久保に相談」というようなプランナーになるのが目標です。 趣味はグルメ、マンガ、美術館、神社仏閣巡りと雑食。