Creative 2023.04.12

コンセプトは「エモ」~ 資格・学習系スクールのクリエイティブづくりを実際の案件をもとに解説~

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高砂 知葉

CreatorZine転載分

はじめまして。株式会社D2C R クリエイティブプランナーの高砂知葉です。
第8回となる今回は、資格・学習系サービスの中でも「プログラミングスクール」を例に、運用型広告における他社と差別化させるためのクリエイティブ制作を実際の案件とともにお伝えします。

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資格・学習系スクールサービスの現状

資格・学習系スクールサービスが増加傾向にあるのはご存知ですか?

新型コロナウィルスの影響によりおうち時間ができたことで、資格の受講者はコロナ禍前に比べ、約1.5倍増加しました(※1)。またその中でもEdtech市場が強く、プログラミング教育のユーザーは157%増加(※2)。市場全体が上昇傾向にあり、今後も伸びていくことが見込まれます。

そんなプログラミングスクールに焦点をあて、ほかの多数サービスと差別化するためのクリエイティブ制作の考えかたをお届けします。

プログラミングスクール広告でも大切なクリエイティブのポイント

他社と差別化させるクリエイティブ制作を行う前に、市場ではどういったクリエイティブがあるのか、市場傾向を知ることが大切です。

まず他社広告を収集し「どういった内容の訴求で」「どんなクリエイティブ制作が行われている傾向が多いか」などを分析します。その中でも多く配信露出がある広告に目を付けることで、ユーザーへの影響力(クリックやCV結果より配信露出が多いと考えられているため)がある広告、いわゆる“勝ち訴求”を見つけ出すことができます。

たとえばプログラミングスクールの広告で、こういったクリエイティブを目にしたことはありませんか?下のイメージ図は、私がよく目にした訴求をもとに作成したものです。

このクリエイティブの訴求ポイントは次の3つです。

・未経験者訴求:「未経験者でも安心!」「未経験者大歓迎!」
・実績訴求  :「就職率100%」「継続率100%」
・期間訴求  :「2週間で!」「最短で!」

なにが訴求されているかを把握することで市場のニーズを考えることができるため、検証を行う前でも、当たり率の高いクリエイティブ(CTR・CVRが高く効果の良いクリエイティブ)制作を行うことが可能です。

またこの訴求で獲得できる想定ターゲットとしては、各訴求のキーワードをポジティブに受け止めることができるため、プログラミングスクールでの学習を検討しているユーザーが考えられます。

先ほどの訴求ポイントに、想定されるターゲットの気持ちを加えてみましょう。

・未経験者訴求「未経験者でも安心!」「未経験者大歓迎!」
 ⇒ターゲットの気持ち「自分と同じように未経験の人もいるんだ。私も頑張れそう!」

・実績訴求「就職率100%」「継続率100%」
 ⇒ターゲットの気持ち「スクールで頑張れば、プログラマーになれるんだ!」

・期間訴求「2週間で!」「最短で!」
 ⇒ターゲットの気持ち「そんなに期間が短いなら、自分も短期集中で頑張る!」

このように、各訴求のテキストが、新たな将来へ一歩踏み出すための安心要素と考えられているのではないかと推測できます。だからこそ多くの広告で使用され、勝ち訴求であると言われているのです。

一方、広告はネガティブに捉える方がいるのも事実です。実際に、SNSでは【就職率〇〇%】という表記に対して、「就職率90%とか、マジで意味ない。(Fラン含む)大学合格90%って意味ないでしょ。」と捉えているユーザーがいました。また「プログラミングスクール」と検索すると続く第二検索ワードは「やめとけ」、「闇」、「無駄」など。情報が多いからこそ、良い意見も悪い意見も見ることができるため、学習意欲はあるものの、スクールを検討する前段階で悩んでいる方が多いようです。

つまり、同じターゲットでも広告に対する捉えかたは異なります。だからこそ、勝ち訴求だけでは一歩踏み出しきれない人たちのインサイトを発掘し、スクールサービス方針を伝えるためのクリエイティブコンセプトを設けることで差別化ができるのではと考えました。

その結果、プログラミングスクールを志望するターゲットに対して有効なコンセプトを「エモ」と設定しました。

“勝ち訴求”以外のクリエイティブづくりとは【実例有り】

では私がなぜ「エモ」にたどり着き、どのように「エモ」をクリエイティブに落とし込んでいったのか。実際の担当案件を例に説明していきたいと思います。

▼担当案件概要
・サービス名:CODEGYM(コードジム)
・サービス概要:プログラミングスクール
・キャッチコピー:自分を追い込めるプログラミングジム
・サービス方針:プログラミングを簡易に目指すのではなく、転職を考慮し、転職後も活躍できる人材へと成長できるスクール。
・クリエイティブ課題:現状クリエイティブのバリエーションが少なく、他社サービスとの差別化ができているのか不明確であること。
 獲得したいのはサービス方針にあったユーザー。

まず、前段でもお伝えしたようにターゲットのインサイトを発掘するために、ソーシャルリスニングと自身の周りのターゲットへのヒアリングを行いました。

行ったこと1:ソーシャルリスニング

最初にプログラマーを目指すターゲットを学習経験者と学習未経験者のふたつに分類し、深堀をしました。

【A】学習経験者(スクール体験者または独学経験者)の実際のインサイト
・今まで一人でコツコツ勉強してきたけど、やっぱり一人としんどい
・分からないことが分からないからへこむ。
・エラーが出ると解決するだけで1日かかった。モチベも下がる。
・「プログラミングで稼ぎたい」と思ったが、ハードすぎて挫折
・本を読んで分かった気になっても「本当にあっているか分からない」拭えない不安
・今の学習方法が正しいのか不安

見受けられたのは、将来を考えて学習を始めたものの、現状への不安などから頑張りきれない方です。

【B】学習未経験者の実際のインサイト
・口コミを見て、スクール選びをしているけど、本当に正しいのか分からない。
・「本当に正しい情報?」「だまされてない?」相談できる人もいなくて
・プログラミングスクールに通いたいけど、いつから通うかは未定
・短期間でほんとになれるの?
・頑張り続けられるか自信がない

学習未経験者からは、情報収集段階により情報が混雑しており決断しきれていない、つまり行動に移せないといった声が多くありました。

行ったこと2:自身の周りのターゲットにヒアリング

次に、社内のエンジニアに実際どのような経緯で今の仕事を選んだのかを聞きました。

今回は幸運にも社内にターゲットとなるプログラマーが所属していましたが、なかなかターゲットに近しい人に話を聞くことができないケースも多いと思います。その場合は、ターゲットに近しい人に話を聞くようにしましょう。私は生の声からアイディアが生まれることが多いため、社内にいないときは親や友達に意見を聞くようにしています。

今回ヒアリングしたのは次のような内容です。話を聞いたタイミングである程度のラフ案を作成していたため、ヒアリング時にラフも確認してもらいました。

・なぜプログラマーを目指したのか?
・学んでいくときにつまいたポイントは? 
・実際に辞めたいって思ったことはありますか?
・プログラマーへの就職後はいかがですか?
・正直このラフは、プログラマーを目指していた時の自分に響くと思いますか?

これらより、ターゲットは新しい道(プログラマー)を目指す際に将来に対して「不安」や「不信感」を抱いていることがわかりました。また踏ん切りをつけるために「背中を押してあげる」ことで安心感を持ってもらったり、頑張ろうという気持ちになってもらうことも大切だと感じました。

私も同じように新しくなにかを始める際、立ち止まりたくなったり、迷ったりすることがあります。だからこそ、実績や数字でスクールの魅力を伝えるのではなく、「自分だったらここで頑張れそう」と感じてもらうことが大切ではないか。そのため、コンセプトを「エモ」にすることで、ターゲットに自分ごととして捉えてもらえると考えました。またクライアントのサービス方針が「本気で一緒に頑張れる人を応援したい」だったため、エモというコンセプトはより響くとも考えました。

ここでは、「エモ」を「うまく言葉で言い表せないが感情が高ぶっている」状態だと定義しています。つまり、広告に触れてユーザー自身の現状や将来性を想像してもらうこと。そして、サービス利用におけるイメージをも膨らませることで、その後のユーザーのアクションを促すことがクリエイティブの目的です。

実際に制作したクリエイティブは次のとおりです。

\💡エモPOINT/
・独学に対しての不安をあえて黒字で背景に起用しつつ、ターゲットに「わかる、自分もそんなときあったな」と感じさせる
・ビジュアルの女性のまっすぐ前を見る視線と独学の不安を払拭させるための「諦められない」というコピーで背中を押す。

 

\💡エモPOINT/
・無機質に詳細を記載するのではなく、「あなたが頑張りたいと思った日から」のような寄り添ったテキストを起用
・「※ガチの人のみですが。」と記載することで、そくらい追い込んだほうが自分は頑張り切れる!と感じてもらう。

 

\💡エモPOINT/
・ただ呼びかけるのではなく、「どんな」プログラマーになりたいかを問いかけることで、プログラマーになったその後の姿を想像させる。
・スクールでの自分自身の成長を促し、スクールが安心感のあるサポートをしている一面を見せる。

まとめ

今回、近年増え続けている「プログラミングスクール」に注目し、新たな訴求で他社と差別化を図ることについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

運用広告では、もちろん効果に紐づくことが重要視されていますが、それと同時にいかにユーザーインサイトを理解し、他社広告と差別化をしながらサービス方針を伝えていくべきかを考えることも重要です。

今回紹介したクリエイティブの差別化するための考え方をぜひ実践していただけると嬉しいです。それでは次回もお楽しみに!

 

☟Creatorzineにて連載中!過去の記事一覧はこちらから☟
https://creatorzine.jp/search/D2CR

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高砂 知葉

総合プランニング本部クリエイティブ部所属。 総合デザイン制作会社にて企画営業・ディレクターを経て、「もっとクリエイティブと向き合いたい!」と思い、D2C Rへ転職。これといった特定の趣味はないが、楽しそう!面白そう!があるとすぐ飛んでいきがち。 大学時代はメキシコに留学経験もあり。

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