顧客分析とは?15のフレームワークと目的別の手法・分析の手順を解説

みなさん、こんにちは。
顧客ニーズが多様化し、あらゆるチャネルでの情報接点が生まれている今、マーケティングで成果を上げるためには「顧客を深く知ること」がこれまで以上に重要になっています。その中でも注目されているのが「顧客分析」です。
今回は、顧客分析の基本的な考え方から、目的別に使い分けるべき15の分析フレームワーク、さらに実務で活用できるツールや成功のポイントまでを網羅的に解説します。
「顧客を知り、売上につなげる」分析をお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
顧客分析とは?
現代のビジネス環境では、モノや情報が溢れ、顧客の選択肢も多様化しています。そんな中、企業が持続的に成長していくためには、「顧客をどれだけ深く理解できるか」がカギを握っています。顧客の属性・行動・心理などをデータに基づいて把握し、商品開発やマーケティング施策、営業活動に活かす取り組みが「顧客分析」です。
顧客分析は単なるデータ集計ではなく、「誰に・何を・どう届けるか」を明確にするための戦略的プロセスです。ここでは、顧客分析の役割や、注目が集まっている背景について詳しく解説します。
顧客分析の役割
顧客分析の役割は、大きく分けて以下の3つです。
- 顧客理解の深化
性別、年齢、地域といった基本属性に加え、購買履歴やサイト訪問履歴、アンケートなどのデータを活用することで、顧客のニーズや関心をより正確に把握できます。 - マーケティング・営業施策の最適化
「どのような顧客に、どんな施策が効果的か」を判断する指針になります。ターゲティング、広告出稿、キャンペーン設計、コンテンツ制作など、あらゆる施策に分析結果を活用できます。 - LTV(顧客生涯価値)の最大化
一人ひとりの顧客との関係性を継続的に深めることで、売上の安定化やアップセル・クロスセルの促進が図れます。
なぜ今、顧客分析が重要視されているのか?
顧客分析の重要性が高まっている背景には、いくつかの社会的・技術的な変化があります。
- デジタル接点の増加
SNS、Webサイト、メール、アプリなど、顧客との接点が多様化・複雑化しており、従来の画一的なマーケティング手法では対応が難しくなっています。 - 顧客の期待値の上昇
パーソナライズされた体験が当たり前になり、企業は一人ひとりに合った情報提供やサービス対応を求められています。 - テクノロジーの進化
CRMやMA、BIツールの普及により、顧客データの収集・分析・活用が現実的かつ容易になってきました。
こうした環境下では、「勘や経験」に頼ったマーケティングでは成果が出にくくなっています。だからこそ、データドリブンな意思決定の基盤として、顧客分析が欠かせない要素となっています。
顧客の“今”を見抜く「docomo data square」の活用
急速に複雑化する顧客行動を読み解くうえで、今注目されているのが、「リアルな行動データ」を活用した顧客分析です。オンラインだけでなくオフラインでの購買・来訪行動までもカバーできる分析基盤が活用いただけます。
- 特定店舗への来訪者属性の可視化
- 決済データによる傾向分析
- 日常生活パターンの把握
- オフライン行動とWeb広告接触の相関分析
これにより、「どんな人が、いつ、どこで購買に至ったか」といった、マーケティング戦略設計に欠かせない“属性・時間・場所”の軸を統合した分析が可能になります。D2C Rでは、このdocomo data squareを活用したマーケティング施策を支援しています。
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顧客分析を行う目的と必要性
顧客分析は、単なる「データの把握」ではなく、事業活動を戦略的に進めるための施策です。適切なターゲットを選定し、顧客の本当のニーズを掘り下げ、仮説の検証と改善サイクルを回していくことが、あらゆるビジネスで重要となります。
ここからは、顧客分析が果たす3つの代表的な目的として、ターゲット特定、ニーズの理解、そしてニーズの検証について詳しく解説します。
ターゲットを特定
最初の目的は「自社がアプローチすべきターゲットを明確にすること」です。顧客分析によって、年齢・性別・職業・居住地などの基本属性だけでなく、購買頻度、チャネル、単価、ライフスタイルなどの情報が可視化され、自社の商品やサービスと相性のよい層を的確に見極めることができます。
これにより、無駄なマーケティングコストを削減しつつ、成果に直結する層にリソースを集中することができます。広告やコンテンツ配信、営業アプローチの精度が高まり、コンバージョン率を高めることにもつながります。
顧客ニーズの理解
顧客分析の2つ目の目的は、「顧客が本当に求めている価値=ニーズを深く理解すること」です。購買履歴や行動ログ、アンケート結果などのデータを組み合わせることで、顧客がなぜ商品を選んだのか、何に満足・不満を感じているのかといった心理の可視化が可能になります。
表面的な属性では見えなかった「意外な購入動機」や「商品に対する期待値」が見えてくることもあり、商品改良や訴求メッセージの見直しに大きなヒントになります。
ニーズの検証
顧客分析は、施策実行後の「ニーズ仮説の検証」にも活用されます。たとえば、「20代女性向けにAという機能を強調した施策」が本当に響いたのかどうかを、CVRやリピート率、離脱率などのデータを用いて評価できます。
施策前に立てた仮説と実際の結果を突き合わせることで、「どのニーズにどう応えれば成果が出るか」を検証・改善し続けるPDCAサイクルが構築できるのです。この継続的な検証プロセスを行うことで競合優位性を高めることができます。
目的別に見る顧客分析フレームワークの選び方
顧客分析の成果を最大化するためには、「目的に応じた適切なフレームワークの選定」が欠かせません。顧客データを扱う目的は、リピーターの育成、ニーズ別のセグメント設計、購買プロセスの改善、競合対策など多岐にわたります。それぞれの目的に対して、活用すべき分析手法を整理しておくことで、戦略立案や施策の実行がスムーズになります。
以下の表は、よくある6つの目的に対して最適な顧客分析フレームワークをマッピングしたものです。自社の課題に合ったフレームワーク選定の参考にしてみてください。
顧客分析の目的別フレームワーク対応表
分析の目的 | フレームワーク |
---|---|
リピーター強化 優良顧客の発見 | デシル分析 RFM分析 LTV分析 |
セグメント別 施策の立案 | セグメンテーション分析 クラスター分析 ペルソナ分析 |
カスタマージャーニー の可視化 | カスタマージャーニーマップ CTB分析 |
営業プロセス の改善 | パイプライン分析 CPM分析 SWOT分析 |
新しい行動パターン 傾向の発見 | 行動トレンド分析 コホート分析 バスケット分析 |
市場や競合とあわせた 全体戦略立案 | 3C分析 SWOT分析 (※重複利用される) |
主要な顧客分析フレームワーク15選
ここからは、実務でよく使われる15種類のフレームワークをピックアップし、それぞれの特徴・活用目的・具体的な使い方を詳しく解説します。
デシル分析
デシル分析とは、売上金額の高い順に顧客を並べ、上位から10等分してグループ化し(各グループをデシルと呼ぶ)、どの顧客層が全体売上にどれだけ貢献しているかを可視化する分析手法です。たとえば「第1デシル=上位10%の顧客」が売上の50%を占めている、といった結果が得られた場合、その少数の上位顧客が企業収益に大きく貢献していることが分かります。
この手法の特徴は、非常にシンプルかつ視覚的に分かりやすいため、経営層への報告資料や戦略立案時の意思決定材料として有効な点です。また、CRM施策やキャンペーン設計時に、重点ターゲットとなる「優良顧客層」をピンポイントで特定するのに役立ちます。
活用方法としては、ECサイトや小売業などで「ロイヤルカスタマー(上位デシル)」に限定した特別な施策を打つことで、顧客満足度とLTVを向上させやすくなります。逆に、第10デシル(最下位層)にはコストをかけすぎず、全体的な利益効率を高める施策も検討できます。
RFM分析
RFM分析とは、顧客を「直近の購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「購買金額(Monetary)」の3指標でスコアリングし、優良顧客を分類・可視化する代表的な手法です。特にリピーター育成や休眠顧客の掘り起こしなど、CRM施策の設計に多用されます。
たとえば、Recencyが高い=最近購入した顧客は興味・関心が強く、再購買の可能性が高いと判断できます。さらにFrequency(購入回数)が多く、Monetary(購入金額)も高ければ、「自社へのロイヤルティが高い最重要顧客」として特別な対応が必要になります。逆に、いずれのスコアも低い場合は、離反リスクが高い顧客とみなされ、再アプローチやクーポン施策などが検討されます。
RFM分析はデータがあれば即実行可能で、BIツールやExcelでも構築しやすい点が魅力です。スコアをランク化し、マトリクス表やヒートマップにすると、顧客全体の構造や成長ポテンシャルが明確になります。メール配信や広告配信のセグメント設計にも直結し、LTV最大化の施策立案に欠かせないフレームワークです。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客を共通の特性に基づいて複数のグループに分類するフレームワークです。年齢、性別、地域といったデモグラフィック属性だけでなく、購買履歴やWeb行動、嗜好といった行動的・心理的特性によって分類することも可能です。
この分析の最大のメリットは、顧客ごとのニーズの違いを明確にし、マーケティング施策を個別最適化できる点です。たとえば、同じ商品を販売する場合でも「価格重視層」「機能重視層」「ブランド重視層」に対して異なるメッセージを用意することで、コンバージョン率を高めることができます。
セグメンテーションの精度が上がると、広告のターゲティング、メールマーケティング、接客チャットなどのパーソナライズ施策が可能になり、無駄なコストを削減しつつ、CVRの向上につながります。注意点としては、「分類しやすさ」と「実用性」を両立させること。セグメントが細かすぎると運用が複雑化し、かえって成果につながらないケースもあります。データの粒度と実務とのバランスが重要です。
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、ユーザーのアクセス状況やアプリ利用、購買行動などを時系列で分析し、「顧客の行動パターンの変化」を可視化する手法です。過去と現在の行動データを比較することで、トレンドの浮き沈みや、特定キャンペーンの影響を定量的に把握できます。
たとえば、特定の商品カテゴリへのアクセスが月単位で増加している場合は、ニーズの変化や新たな購買傾向の兆しといえます。逆に、閲覧数やCV率の急落が見られる場合は、離脱や不満のシグナルとして施策の見直しが必要です。
この分析は、広告施策の効果検証、UI改善、商品ラインアップの見直しなど、リアルタイム性が求められる意思決定に有効です。また、GA4などのWeb解析ツール、アプリ分析ツール、MAツールと組み合わせることで、自動化やアラート設定も可能です。
コホート分析
コホート分析とは、「同じ期間に流入・購入・登録した顧客群(コホート)」ごとに、その後の行動や定着状況を追跡する手法です。たとえば「2024年1月に初回購入した顧客」と「2024年2月の新規登録者」でグループを分け、数ヶ月後のリピート率や継続利用率を比較します。
この分析の最大の利点は、「施策や時期の違いが、その後の顧客行動にどんな影響を与えたのか」を相対的に評価できることです。キャンペーン、広告、プロダクト改善、季節要因など、複数の変数が重なった中でも、時系列を基軸に変化を定量化できるため、A/Bテストでは把握しきれない「長期的な傾向」や「隠れたパターン」が見えてきます。
SaaSやサブスクリプションビジネスにおいては、契約継続率の改善やオンボーディングの設計に欠かせない分析です。月ごとのコホート表(コホートマトリクス)を使えば、継続率・リテンション率を視覚的に把握しやすくなります。
LTV分析
LTV(ライフタイムバリュー)分析は、1人の顧客が自社と取引を継続する中で生涯を通じてどれだけ利益をもたらすかを金額ベースで算出するフレームワークです。LTVを可視化することで、マーケティング投資や顧客育成施策の「リターン」を定量的に評価することが可能になります。
LTVの基本的な計算式は「平均購入単価 × 購入回数 × 継続期間」ですが、SaaSなど継続課金型ビジネスでは「ARPU(1ユーザーあたりの平均月間売上) × 平均契約期間」で算出されるケースもあります。さらに高度な分析では、粗利率やチャーン率(解約率)、紹介率なども加味して精緻にシミュレーションされます。
LTVが高い顧客群を特定できれば、その層に集中投資することで効率的に収益を最大化できます。一方で、LTVが低い顧客ばかりを集めていては、いくらCV数が多くても利益は出ません。だからこそ、LTV分析はCPA(顧客獲得単価)と並んで、マーケティングROIを判断する上で重要な指標とされています。
CTB分析
CTB分析は、Cognition(認知)→ Thinking(検討)→ Behavior(行動)の頭文字を取ったモデルで、顧客がどのステージにいるのかを可視化し、適切なコミュニケーションを設計するためのフレームワークです。BtoBでもBtoCでも広く応用され、主にリードナーチャリングや購買ファネル分析に活用されます。
たとえば、「認知」段階の顧客には認知拡大のための広告やSNS投稿を用意し、「検討」段階では比較資料やFAQ、「行動」段階では限定オファーや決済手段の明確化といった具合に、ステージごとに適したコンテンツやチャネルが必要になります。
CTB分析は、カスタマージャーニーの全体像を簡略化しながら戦略に落とし込める点が魅力です。加えて、MAツールやCRMと連携することで、スコアリングに応じたステージ分類とアクションの自動化も可能になります。マーケティングオートメーションを導入している企業では、CTBを軸にしたスコア設計とメール配信設計が非常に有効です。
パイプライン分析
パイプライン分析とは、見込み顧客(リード)が「認知 → 接触 → 商談 → 提案 → 成約」などの営業プロセス上で、どのステージに何件あり、どこで停滞しているかを可視化する手法です。特にBtoBや高額商材において、営業活動のボトルネック発見や成約率向上の施策立案に役立ちます。
営業担当がどれだけ案件を抱えていて、それがどの段階で詰まっているのかを見える化できるため、個人・チームの生産性やリソース配分の最適化にもつながります。たとえば、「商談化率は高いが成約率が低い」なら、提案内容や価格設定に課題がある可能性が示唆されます。
SFA(営業支援システム)やCRMツールを活用すれば、パイプラインのステージごとの件数や成約率をリアルタイムでトラッキングすることができ、管理職層のマネジメントにも直結します。リードの質、進捗スピード、案件の成長率なども分析対象となり、営業プロセス全体の改善に活用できます。
CPM分析
CPM分析は、Cost Per Milestoneの略として用いられることが多く、各マーケティング施策や顧客接点が、成果に対してどれだけの費用対効果を持っているかを評価する手法です。たとえば、「1件の資料請求獲得にかかったコスト」「1人の購買までに要した広告費」などを定量化します。
CPA(Cost Per Acquisition)と似ていますが、CPMでは成果を中間目標(例:セミナー申込、ホワイトペーパーDLなど)に設定することで、顧客育成の段階ごとに施策の有効性を分析することが可能です。これにより、「予算をどこに割くべきか」「どのチャネルが有効か」といった判断が定量的に行えます。
MAツールや広告管理ツールと連携すれば、施策ごとにCPMの変化を日次・週次で把握し、PDCAを高速で回すことも可能です。マーケティングのROIを見える化するフレームワークとして、特にKPIが細分化されているチームで重宝されます。
バスケット分析
バスケット分析(アソシエーション分析)は、「ある商品を購入した人は、他にどんな商品を同時に購入しているか」を分析する手法です。小売業やECサイトで広く使われており、「購買の組み合わせパターン」を明らかにすることで、クロスセルやレコメンド戦略に活用されます。
たとえば、「A商品を買った人の60%がB商品も同時に購入している」という結果が出た場合、その2商品をセットでおすすめしたり、バンドル販売を設計したりすることで売上の最大化が狙えます。この分析は、POSデータやECの購買履歴から容易に実行可能です。
応用例としては、飲料と菓子の組み合わせ、文房具とノートの組み合わせなど、購買の文脈を踏まえた販促や店舗レイアウトの最適化にも使われます。マーケティングオートメーションツールにバスケット分析を組み合わせることで、1to1のパーソナライズ施策も実現可能です。
3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から現状を分析し、差別化戦略やポジショニングを導き出すフレームワークです。もともとは経営戦略立案の定番フレームワークですが、マーケティングや商品開発においても非常に有効です。
顧客分析では、Customerパートにおいて年齢層、行動傾向、購買理由、LTVなどを掘り下げることができます。一方、Competitor分析では競合のサービス内容、価格、プロモーションの特徴を把握し、Companyでは自社の強み・弱みやリソース状況を客観視します。
これらを組み合わせることで、「顧客が求めているが、競合が提供できていない領域」に自社の強みをマッチさせる戦略が明確になります。データをもとにした3C分析は、特に市場参入・商品リニューアル時の判断に役立ちます。
▼3C分析について解説した記事はこちら
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスと出会い、購入・利用に至るまでのプロセスを時系列で可視化し、感情や行動、接点を整理する分析手法です。認知→興味→検討→購入→利用→ファン化といったステージに分けて、各段階での顧客体験を深掘りしていきます。
この手法の強みは、「顧客がどのタイミングで、どんな感情や課題を抱えているか」が明確になる点です。たとえば、「商品ページは訪問しているが、購入に至っていない」なら、検討フェーズでの情報不足や不安要素が存在することが読み取れます。
また、各フェーズごとにタッチポイント(SNS、広告、問い合わせ、店頭など)を整理することで、施策の優先順位やUI/UX改善の方向性が見えてきます。デザインチーム、マーケティング、営業、カスタマーサポートなど部署横断で活用できる点も大きなメリットです。
▼カスタマージャーニーについて解説した記事はこちら
SWOT分析
SWOT分析は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの観点から自社を取り巻く状況を整理し、戦略の方向性を定めるための基本フレームワークです。マーケティングにおいては、顧客データや市場トレンドを活用して、より精緻な戦略設計に役立てます。
たとえば、LTVやRFMデータをもとに「自社の強み=リピーターが多い構造」を明示したり、コホート分析から「顧客離脱が早い=弱み」として課題を抽出したりすることが可能です。外部要因としては、競合の出現や市場縮小などの脅威、EC市場の成長や新しい技術トレンドなどの機会が挙げられます。
このようにSWOT分析をデータドリブンで行うことで、主観的な印象に偏ることなく、実態に即した戦略立案が可能になります。特に、経営会議や事業計画策定の場で、説得力ある説明材料として機能する点も大きな利点です。
ペルソナ分析
ペルソナ分析とは、自社のサービスや商品にとって最も価値のある顧客像を架空の人物として具体化する手法です。性別、年齢、職業、年収、家族構成、ライフスタイル、価値観、日常行動、購買動機などを詳細に設定し、「このような人がこの商品を必要とし、どのような経路で購入するか」を明確にします。
ペルソナの設定は、マーケティングや商品開発、UI設計などあらゆる施策の判断基準になります。たとえば、40代共働き世帯の主婦というペルソナに対しては、時短・簡便性を強調した訴求が有効です。逆に、若年層男性にはコスパや遊び心、デザイン性が重視される可能性が高く、メッセージやタッチポイントも変える必要があります。
注意点としては、ペルソナが独り歩きして実態と乖離することです。そこで有効なのが、実際の顧客インタビューや定量データ(RFM、アンケートなど)を元にした「データドリブン型のペルソナ設計」です。定性情報と定量データを統合し、現実に根ざした戦略設計を実現できます。
▼ペルソナ分析について解説した記事はこちら
クラスター分析
クラスター分析とは、年齢や購買頻度、商品カテゴリ、アクセス頻度、地域、性別など複数の指標をもとに顧客を自動的にグルーピングする統計的手法です。セグメンテーション分析と似ていますが、あらかじめ軸を指定する必要がなく、AIや機械学習などで“自然に発生するグループ”を見つけられるのが特徴です。
たとえば、見た目には共通点のない顧客群でも、行動パターンや購入傾向が近い場合、それらは“似たニーズを持つクラスター”としてまとめられます。これにより、「従来の属性では捉えきれなかった潜在セグメント」を発見できる可能性が高まります。
マーケティング施策では、各クラスターごとに最適なアプローチを設計し、メルマガ、広告配信、コンテンツ出し分けなどに活用できます。また、顧客ごとのパーソナライズ施策やレコメンデーションエンジンの強化にもつながります。分析にはBIツールやMAツールでも視覚的にクラスター分析が可能です。
顧客分析の手順

顧客分析を効果的に進めるためには、単にデータを集めて可視化するだけでなく、「目的設定 → データ収集 → 分析 → 施策実行 → 振り返り」という一連のプロセスを意識して設計・実行することが重要です。
ここからは、初心者でも迷わず取り組めるよう、顧客分析の基本的な手順を5つのステップに分けてわかりやすく解説します。
目的を明確にする
分析の第一歩は「なぜ分析するのか?」という目的の設定です。たとえば「リピーターを増やしたい」「解約率を下げたい」「クロスセル率を高めたい」といった具体的なゴールを定めることで、使用すべきフレームワークや分析視点が自ずと決まります。
目的が曖昧なまま進めると、データは集まっても活用につながらず、時間やリソースを無駄にしてしまう恐れがあります。
必要なデータを収集・整理する
目的に応じて、どのようなデータが必要かを選定し、信頼性のあるデータソースから収集します。たとえば、RFM分析には購買履歴、カスタマージャーニーにはタッチポイント情報、セグメンテーション分析には年齢や性別といった属性情報が求められます。
同時に、データの「欠損値」や「重複」の整理も重要です。CRM、MA、SFAなどのシステムと連携することで、効率的かつ網羅的なデータ収集が可能になります。
フレームワークを使って分析する
収集したデータをもとに、目的に合ったフレームワークを適用して分析します。たとえば、購買傾向の把握にはデシル分析やRFM分析、セグメント設計にはクラスター分析、顧客離脱の要因探求にはコホート分析が有効です。
BIツールや統計ソフト、Excelなどを使えば、データの視覚化や相関の発見もスムーズに行えます。分析結果はグラフやヒートマップで表現することで、関係者への共有も容易です。
示唆をもとに施策を立案・実行する
分析結果から得られたインサイト(示唆)をもとに、改善施策を企画・実行します。たとえば、優良顧客にはロイヤルティ施策を、離脱傾向のある層には再アプローチのキャンペーンを行うなど、データに基づいたアクションが求められます。
また、フレームワークによって可視化された顧客のインサイトは、広告出稿、メール配信、UI改善、商品設計などあらゆる施策に応用可能です。
施策結果を検証し、改善を重ねる
顧客分析は一度で完結するものではなく、継続的な改善のためのループ構造が必要です。施策を実行した後は、CV率、LTV、リピート率などの指標を再度分析し、成果を検証します。
成果が出なかった場合も、「どの仮説が誤っていたか」「どこで離脱しているか」を見直すことで、次の施策の精度向上に取り組みます。このPDCAサイクルこそが、顧客分析を“事業成果”に結びつける最も重要な活動です。
“点”ではなく“線”で顧客を捉える「docomo data square」
施策の効果を正しく検証し、次のアクションへとつなげるには、「誰が、なぜ反応したのか?」を多角的に読み解く必要があります。しかし、一般的なCRMやWeb解析ツールでは、自社サイトや広告に接触した“点”の情報はわかっても、その前後の行動や生活圏までを把握することは困難です。
docomo data squareでは、NTTドコモが保有する大規模な位置情報データをもとに、ユーザーの移動傾向・来訪履歴・属性などを時系列で分析できます。
- 広告接触者の実店舗来訪率を地域・時間帯ごとに比較
- 商圏ごとのリピーターの割合や傾向を把握し、出店戦略に反映
- 新規来訪者の特徴から、次回施策で狙うべきターゲット像を抽出
D2C Rでは、docomo data squareの導入支援はもちろん、分析設計・結果の読み解き・施策反映までを一貫してご支援しています。単なるツール提供にとどまらず、貴社のKPI改善に直結する“動かせるデータ”として活用までをサポートいたします。ぜひ一度ご相談ください。
\ 1億超データで顧客分析 /
顧客分析の注意点とポイント
顧客分析を正しく行うことで、ターゲティングの精度向上やLTV最大化といった大きな成果が期待できます。しかし一方で、分析設計や運用を誤ると、むしろ判断を誤るリスクもあります。
ここからは、顧客分析を行う際に特に気をつけるべきポイントを3つに絞ってご紹介します。
顧客の定義を明確にする
顧客分析で最初に見落とされがちなのが、「顧客とは誰か?」という定義です。分析対象となる“顧客”の範囲が曖昧なままだと、成果の出やすい一部のデータだけを見てしまい、全体像を見誤る恐れがあります。
たとえば、ECサイトにおける「会員登録済みユーザー」と「非会員の購入者」では、購買頻度やLTVが大きく異なる可能性があります。分析の目的に応じて、「新規顧客」「既存顧客」「休眠顧客」などを明確に分類した上で、それぞれに対して最適な分析設計を行うことが大切です。
また、法人取引の場合は「購買担当者」と「意思決定者」が異なることも多く、「誰の行動を分析対象にすべきか」も慎重に考える必要があります。
顧客データの収集と整備を行う
正確な顧客分析は、整ったデータがあってこそ成り立ちます。しかし実務では、「データがバラバラ」「重複している」「最新でない」「形式が統一されていない」といった課題が頻発します。これらの課題を放置したまま分析を始めてしまうと、誤ったインサイトに基づいた意思決定をしてしまうリスクが高まります。
そこで重要になるのが、「分析前のデータクレンジング(整備)」です。顧客IDの一意化、同一人物の統合、属性項目の標準化など、事前にデータを正規化しておくことで、後工程のフレームワークやツールとの整合性も取りやすくなります。
また、データの鮮度も重要です。3年前の購買履歴だけを分析しても、今のニーズは反映されません。最新データとのバランスを取りながら、定期的なデータ更新を行う仕組みが求められます。
購買プロセスまで把握する
顧客分析を「属性データ」や「購買金額」だけで終わらせてしまうと、行動の背景や購入に至るまでのプロセスが見えません。顧客の購買決定には、認知→比較検討→購入→再購入といった段階があり、それぞれのステージで異なる要因が影響しています。
そのため、分析にあたっては「いつ・どこで・何を見て・どう比較し・なぜ購入したか」といった行動ログやカスタマージャーニー視点を取り入れることがポイントです。特にWebやアプリ上での行動履歴、広告接触、離脱タイミングなどの情報は、購買までの意思決定プロセスを定量的に把握する上で非常に有効です。
このプロセス全体を可視化することで、「広告の効果が出ていないのではなく、商品ページのUIが離脱要因だった」など、真の改善ポイントが明確になります。
まとめ
顧客分析は、単なるデータ整理ではなく、「顧客を知ること」からすべてのビジネス戦略が始まるという視点で取り組むべき重要なプロセスです。フレームワークやツールを適切に使い分けることで、LTVの最大化や離脱の防止、新たなニーズの発見といった具体的な成果へとつながっていきます。
今やマーケティングにおいて「勘」や「経験」に頼る時代ではなく、購買履歴・Web行動・位置情報などを組み合わせた“科学的な意思決定”が求められています。顧客の動きと意識を可視化し、確かなデータに基づいて施策を設計・改善していくことが大切です。
D2C Rでは、docomo data squareを活用したリアルデータ分析と、マス×デジタルを横断した統合マーケティング設計を強みに、企業の顧客理解を深め、収益性向上に直結する支援を行っています。ぜひお気軽にご相談ください。