Data 2020.03.10

中国の事例に学ぶOMO

黄嘉驊

黄嘉驊

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こんにちは、運用担当の黄です。

前回私が取り上げていた「OMO」の内容はいかがでしたでしょうか? 今回は実際詳しい事例を含めて紹介したいと思います。

中国では「OMO」と言えば、「Luckin COFFEE」というコーヒーチェーン店の事例が日本ではかなり有名です。「OMO」を通じて、スターバックスと対抗するようになり、またスターバックスもそれに応じて自社アプリをアップデートする事例でした。

今回はちょっとあまり日本では紹介されていない、かなりホットな話題を中心に紹介させていただきます。
まずは出前サービスの「美団」アプリ。最近コロナウイルスにより日本でもマスクなど買いにくい状況になっていますが、中国でも同じ現象が起きています。それを解決するために薬局がwechatのミニアプリを活用し、マスクを販売する事例をご紹介いたします。

OMOの事例

美団(飲食サービスアプリ)

Uber eatsは2,3年前から日本で人気が出て話題になりましたが、実は中国で美団が作っているサービスは出前に留まらず、中国飲食業界ではこのサービスが開始された2017年を『OMO元年』と呼んだりもします。実際このサービスが2013年リリースされたあとに、ポジション的には日本の「楽天デリバリー」などのサービスみたいに、出前の注文プラットフォームでしかありませんでした。

わずか4年前までは中国も日本のように、サイトか電話で出前を頼みクレジットカードか現金で支払い、待ち時間と場所を決めて出前を受け取るシステムでしたが、これらがすべて「美団外売」というサービスで変わっていきました。

今やUber eatsの機能はもちろん、近くの惣菜屋、スーパーなどでもこのアプリでサービスを一括管理しています。つまり、お弁当の配達を頼むついでに、薬局で風邪薬を買ってきてもらうことだってできるのです。

中国でも昔から出前文化はありますが、実はそれまではあまり発展していませんでした。理由は主に二つあると考えています。
① クレジットカードの普及率が低く、キャッシュバンクのネット決済だとお店側とユーザー側も面倒。すると支払いは現金になり、現金だと偽札などのリスクがあるため。
②伝統的な電話注文だとお店側の工数がかなりかかる。オーダー間違いも常に発生しており、配達員もいちいち住所を確認して配達するしかないために、生産性が悪い。
つまり、中国で出前アプリを成功させるためには、支払いを一括で完結でき、かつオーダーなどを全て正確に把握できるようなシステムがないと厳しいということになります。リリース当時の「美団外売」は、この後者の機能を備えていましたが、そこまで利用率は高くなく、中国の出前文化を変えることもありませんでした。しかし、Uber eatsみたいなサービスはクレジットカード決算がメインのためになかなか中国でしません。この流れが変わったのは2017年の出来事でした。

2017年「美団外売」のアップデートによりwechat payでの支払いができるようになってから、人々のライフスタイルは変わり始めました。出前注文がスムーズになり、アプリ自体もソーシャルサービスに重視していて、クーポンを配るだけではなく、アプリ内のプロモーションでお店などの情報をユーザーたちが拡散させるような導線で飲食業界は盛り上がりました。更に、顧客データを利用し一人一人の過去の注文履歴から好みの味を分析。新しい店舗でも自分の商品を適正なユーザーに表示されることになり、Uber eatsのような大手チェーン店の一人勝ち状態を打ち破る勢いとなったのです。

レコメンドのイメージとしては、四川料理ばかり食べている人には辛いメニューを、寒い時に暖かいスープのプッシュ通知が来たりするようになっています。またオフラインの店舗でも「美団」を通じて、入店前に支払いして、入店時に料理を待たずにすぐ食べられるようになったり、出前情報と店舗の支払い情報を比較しながら新作メニューを作ったり、仕入の数の調整を行うなど、様々なことが可視化されたことで店舗側の品質も管理しやすくなりました。最近はもはや厨房のみのお店も出てきていると聞くぐらい、中国では今、出前文化が急速に発達しているのです。
支払いサービスを導入することによって、今や「使ってない人なんているの?」というくらい「美団外売」はただの注文プラットフォームから「OMO」を駆使した出前サービスに変貌を遂げました。

Wechatのミニアプリでマスクの抽選販売

現在日本の状況と同様に中国ではマスクの品薄が深刻でなかなかマスクを購入できない状況になっています。マスクを手に入れるために朝薬局がオープンする前に店頭で並び、結局購入できない人が増え、転売目的の人も多くいます。さらにマスクを買うために人が集まって、感染が逆に広まるリスクも高まるという状態。そこでマスクの転売を防止するために一番いい方法は身分証明書(マイナンバー)ごとに購入数を決めること。ただ、それは店舗では絶対管理できないことなので、今回Wechatからミニアプリが開発されのではないかと考えています。
 wechatのミニアプリではマスク予約購入機能を追加し、特に大きな都市では店頭販売を一切取りやめ、すべてネットで一括管理になっています。操作はすごく簡単で、wechatでマスクを検索したらすぐ下記の画面になります(クリエイティブを挟む)。画面の中に自分が居住している都市を選択し、まずショートメールで本人確認。すると抽選の説明ページになり、当選回数は週に1回であること(当選した分は一週間弱使えるマスクの数)、かつ当選したら店頭受け取りではなく、全部配達で届くと明記されています。その利用条約を同意したあとに、自分の居住状況、渡航履歴(主に武漢に行ったことがあるかどうか)、現在の健康状況などを記入し、抽選に参加することができます。毎日同じ時間に当選結果を発表し、落選した人は翌日また抽選。もちろん決済もWeChat Payで完結します。

具体的にはこんな感じになります。

本人確認は携帯のショートメール確認だけではなく、身分証明書の記入なども必要で、これによって一人が何個アカウントを利用してマスクを転売しようとするのも防止できるようになっています。また本人の健康状況なども記入することによって、ビックデータ上現在市民が大体の健康度合いも把握できるようになるという仕組み。

このミニアプリがリリースされて以来、町で人がかなり減ったと地元の友人からも聞いています。無用な買い物を避け、マスクの買い占めなども防ぐことにとても大事な役割を果たしていると言えるでしょう。また個人の健康状況などを記入させることによって、毎日マスクを抽選するために、国民大半の健康状況を把握できるようになります。こうしたミニアプリを通じての「OMO」の活用は災害時には開発コストが低く、しかもほぼ大半の国民が使っているスーパーアプリなら新規アプリのリリースやダウンロードさせるデメリットもなく使ってもらえます。また、データ上しっかり管理する上で、悪質な買い占めなども防げるため、特に災害が多い日本ではこういった活用を視野に入れるべきだと考えています。

今後の展望

2020年は5G元年と呼ばれていて、日本でも各キャリアが売り出していますね。実際普及するまでに、過去4Gのように4~5年かかると思われますが、電子決済においても各QRコード決済サービスがヤフーとラインの統合、メルペイがOrigamiを買収やD払いとの連携などによって、徐々に戦国時代からN強時代になっていくと思われます。

この時代背景では、ただQRコード決済を導入するだけではデータの使い道や新しいマーケティングの分析手法などが行いにくくなる恐れがあります。その中でQRコード決済と提携しながら、自社アプリでしっかり顧客管理が出来るかがカギになっていくと考えています。cookieの利用制限など、データを貯めにくくなる昨今、1st Party Dataを着実に蓄積・分析・マーケティングに展開する術を準備していく必要があるでしょう。

これが出来たときに初めて「OMO」マーケティングの第一歩になるのではないでしょうか?

黄嘉驊
黄嘉驊

メディア本部所属。大学卒業後中国で広告代理店のマーケティング部に所属し、主に自動車メーカー戦略作成や全国リサーチなどを経験。その後筑波大学大学院に入学し、卒業後には広告代理店で運用担当として勤務、昨年11月D2C Rに入社。

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