Data 2023.09.11

適切なクリエイティブ差し替えタイミングをAIで予測する

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内野 陽

皆さん、こんにちは。D2C R ビジネス・インテリジェンス部の内野です。

突然ですが、広告クリエイティブの「摩耗」をご存じでしょうか?
「摩耗」とは、同じ広告がユーザーに見飽きられて広告配信効果が悪化することを言います。
これを避けるためには、適切なタイミングでクリエイティブ切り替え等の対応が必要です。

本記事では、AI(機械学習)で広告クリエイティブ効果の減衰度合いを予測する「摩耗分析」という方法を紹介いたします。

以下記事にて、広告クリエイティブの「摩耗」についてまとめられております。こちらもあわせてご確認ください!

【新人のまなび】広告クリエイティブの摩耗とは?改善の打ち手4選

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摩耗分析とは

摩耗分析とは、冒頭でも記載の通り機械学習を用いて広告クリエイティブ効果の減衰度合いを予測する分析方法です。
広告の画像データ、imp数やcv数等の情報を機械学習モデルに読み込ませることによって
広告効果がなくなるタイミングを予測します。

広告効果の減衰度合いを予測できるということは実際に摩耗が起きる前に広告クリエイティブの切り替え等を行えるということです。
さらには、摩耗に対する対応の大まかなスケジューリングも可能になるため、無駄のない工数で
配信効果の維持ができるようになります。

摩耗分析ができること

・広告クリエイティブの摩耗による効果減少タイミングを予測

何に役立つ?

・摩耗による効果減少が起きる前に対応ができる
・切り替えタイミング等をあらかじめスケジューリングできる 

摩耗分析の仕組み

説明に入る前に -機械学習の仕組み-

摩耗分析の詳細な説明の前に機械学習の仕組みについて簡単に説明いたします。

機械学習とは、機械にデータを与えることによって、そこに潜むパターンを見つけ出す分析方法のことです。
導き出したパターンを用いて、データのグループ分けをしたり未来の数値を予測したりすることができます。

また、今回紹介する摩耗分析は機械学習の中でも「教師あり学習」に分類されます。
「教師あり学習」とは、機械に既にある説明変数(特徴量)と目的変数(結果の値)のデータを与えて学習させ、
学習を終えた機械に予測したいデータの説明変数を与えることで目的変数を算出する分析手法です。
文章ではわかりづらいと思いますので、以下の図をご確認ください。

使用する手法:生存時間分析

生存時間分析とは、n日後にある事象が起こらない(生存している)確率を予測することができる機械学習手法です。
使用例としては、医療の現場で患者の年齢や病気の状態などの数値から、患者ごとにn日後に生存している確率を予測する
というものがあります。
今回は、生存時間分析の中でも「ランダムサバイバルフォレスト」というアルゴリズムを用いた実用例を紹介いたします。

どう活用するのか

医療の現場では、「患者の生存率」を予測する使い方をしていましたが、摩耗分析では
「広告クリエイティブの生存率」に置き換えることで、n日後に広告クリエイティブが広告効果を維持している確率を求めます。
これを求めることにより、一定の確率を下回った場合クリエイティブが摩耗したと判断することができます。
すなわち、分析対象のクリエイティブにおいて、摩耗への対応をすべきタイミングが予測できるということです。

分析例

今回紹介する分析例は、AIを使用せずに配信を行った過去のデータを学習し、
同様のデータをAIに読み込ませた際にどのような予測をするのか検証を行ったものになります。

分析の概要

使用したアルゴリズムやデータは以下の通りです。

アルゴリズム ランダムサバイバルフォレスト
目的変数 広告停止フラグ
掲載期間
説明変数 媒体情報
商材名
時系列データimp数・click数・cv数
画像データ
評価指標 C-index

 

データセット作成処理

学習させるデータセットは、広告掲載開始から掲載終了までの1つの配信期間につき1行の形を持ちます。

こちらにわせて画像データやimp数などの配信結果データを特徴量化する必要がありますが、
今回の分析では以下のような形で特徴量を作成しました。

画像データの特徴量化

クリエイティブ画像の特徴量化には、画像を数値化した上で画像分類A Iに読み込ませる方法と取っております。
今回紹介する事例では、画像ごとに1行50列の特徴量を生成しております。

時系列データの特徴量化

広告ごとのimp・click・cvの日ごとの変化は時系列処理AIを用いて一行の特徴量を生成しております。
今回紹介する事例では、広告ごとにimp・click・cv 各30列の特徴量を作成して使用しております。

検証結果

学習の結果、今回のモデルの精度は0.88となっておりました。
医療現場などでは0.8以上で実用可能となっているため、十分な精度が出ていると言えます。

以下の図は、とあるクリエイティブの配信に対して摩耗分析を行った結果です。

生存率の見方としては、一般的に生存率が50%を下回った時点で生存していないと判断されます。

この結果からは、実際に差し替えたタイミングよりも早い段階で生存率が50%ラインに到達していることがわかります。
上記の例では、クリエイティブ差し替えタイミングを少し早めるべきだったということです。

さいごに

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回はAIを使った広告配信最適化の一部として「摩耗分析」を紹介いたしました。
クリエイティブ差し替えの適切なタイミングをAIで予測するという内容でしたが、このような分析にはデータが必要不可欠です。
適切にデータを蓄積して、どんどん活用していきましょう!

また、AIは数字や数式を扱うためブラックボックスになりがちですが、
数値を根拠に広告をより効率よく配信するための一つの手段として十分な力を持っていると考えております。

今後もAIを使ったより良い広告を目指して頑張っていきたいと思います。
以上です!

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内野 陽

第一営業本部 ビジネス・インテリジェンス部所属。 新卒で2021年4月に入社し、データ分析業務を担当。趣味は音楽とバイク。

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