人流とは?人流データ分析の基本と活用方法、可視化でわかる人の動きとその価値

みなさん、こんにちは。
店舗戦略や都市計画、観光地の混雑対策など、私たちの生活に密接に関わるさまざまな分野で「人の動き」を可視化することの重要性が高まっています。その中で注目されているのが、「人流(じんりゅう)」という概念です。
今回は、人流とは何かという基本的な定義から、人流データの取得方法、分析によってわかること、そして具体的な活用シーンまでをわかりやすく解説します。近年では、位置情報やセンサー技術の進化によって、より精緻な分析が可能となり、データドリブンな意思決定を支える有力な手段となっています。
マーケティングや地域活性化、商業施設の運営に携わる方にとって、人流データの活用は大きな武器となるはずです。ぜひ最後までご覧いただき、「人の流れ」が持つビジネス上の価値について解説していきます。
目次
人流とは?
人流とは、あるエリアにおいて「どこから・どこへ・どれくらいの人が移動したか」を可視化・分析するための概念です。個人を特定することなく、複数の人々の移動データを集約・統計化することで、人の流れや滞留の傾向を把握することができます。
例えば、商業施設にどのエリアから来訪者が多いのか、特定の曜日や時間帯にどれだけ混雑するのか、主要な導線はどこか、といった情報を得ることが可能になります。こうした人流の可視化は、商業戦略や都市開発、防災、観光振興、交通政策など、さまざまな分野で活用されつつあります。
人流と交通量・来訪者数との違い
一見似たような指標に見える「交通量」や「来訪者数」と「人流」ですが、それぞれ測定の意味や用途が異なります。
- 交通量
「通過する車両や人の数」を指し、道路や交差点などの通行状況を把握するために使われます。 - 来訪者数
「施設やエリアに訪れた人数」をカウントする指標で、観光地や商業施設などで利用されます。 - 人流
「人の移動そのもの」に着目し、どこから来て、どこへ向かったかという流れや時間帯ごとの傾向を把握する点が特徴です。
つまり、交通量や来訪者数は「点」での情報ですが、人流は「線」や「動き」としてのデータであり、より立体的かつ戦略的な意思決定につながります。
人流データが注目される背景
人流データが注目を集めるようになった背景には、技術の進化と社会課題の多様化があります。
- スマートフォンの普及
位置情報を取得できるスマートフォンが急速に普及したことで、リアルタイムかつ高精度な人の移動データを取得できるようになりました。 - マーケティングとまちづくりの高度化
従来の勘や経験に頼った戦略ではなく、データに基づく意思決定(データドリブン経営)へのニーズが高まり、実店舗や自治体でも人流データの活用が進んでいます。 - 新型コロナウイルスの影響
感染対策の一環として、混雑状況の可視化や行動制限の判断材料として人流データが多用されるようになり、その有用性が一般にも広く認知されました。
これらの背景を受けて、今では民間企業だけでなく、行政や研究機関でも人流データの分析と活用が積極的に行われています。
人流データの種類と取得方法
人流データの分析において重要なのは、「どのような方法で、どんなデータを取得しているのか」を理解することです。近年は、スマートフォンの位置情報やIoTセンサーなどのテクノロジーの発展により、個人を特定せずに人の移動を高精度に捉えることが可能になってきました。
取得方法は大きく分けて、スマートフォン由来のデータ、各種センサーやビーコンによる観測データ、そしてカメラ解析や交通系ICカードなど他のシステムと連携したデータの3種類に分類できます。
スマートフォン位置情報によるデータ取得
最も一般的かつ広範囲な人流データ取得手法の一つが、スマートフォンの位置情報を活用する方法です。ユーザーが同意したうえで、アプリ経由でGPSや基地局の情報を取得し、端末の移動履歴を解析します。
この手法のメリットは以下の通りです。
- 広域かつ継続的な追跡が可能
- 来訪地や経由地、滞在時間などを高精度に把握できる
- 平日と休日、時間帯ごとの傾向分析にも適している
ただし、プライバシー保護の観点から個人を特定しない統計処理が必須であり、匿名化処理を行ったうえで活用されます。
センサー・Wi-Fi・ビーコンによる取得
屋内や施設内の詳細な人流を捉える際に有効なのが、センサー類やWi-Fi、ビーコン(Bluetooth Low Energy)による検知手法です。以下のような機器が活用されます。
- 赤外線センサー/人数カウンター:出入口の通過人数をリアルタイムにカウント
- Wi-Fi検知:スマホなどWi-Fi端末のMACアドレスを一時的に取得し、移動や滞在を把握
- ビーコン:来訪者が所持する端末との距離を把握し、屋内での動線分析が可能
これらの技術は主に商業施設・駅・イベント会場などの限定エリアで活用され、来場者の行動傾向や回遊状況を高精度に分析できます。
カメラ画像解析や交通系ICカードなどの活用例
近年では、既存のインフラや設備を活用して人流を可視化する手法も進化しています。代表的な例が以下の通りです。
- カメラ画像解析:監視カメラなどの映像をAIで解析し、群衆の動きや混雑度を推定
- 交通系ICカード(Suica・ICOCAなど):乗降履歴から通勤・通学・観光動向を分析
- POSやレジデータとの連携:購買行動とのクロス分析でマーケティング施策に活用
特に交通系ICカードは、鉄道会社などが保有するビッグデータとして、都市圏の移動傾向や時間帯別の利用状況などの把握に活用されています。
スマートフォン位置情報を活用したドコモデータ分析
高精度な人流データを活用したいとお考えなら、NTTドコモが提供する位置情報分析サービスが活用できます。スマートフォン契約者から得られる位置情報データは、属性付きかつ広域での人流把握が可能です。
特長1:年齢・性別などの属性付き人流データ
ドコモの位置情報データは、他サービスにはない「属性情報と人の動きの掛け合わせ」が強みです。たとえば、「20代女性の昼間の滞在傾向」や「50代男性の休日の回遊パターン」など、マーケティングに直結する粒度の高い分析が可能です。
特長2:広告配信と連携したデータ活用
人流分析で終わらないのがドコモデータの強み。docomo data squareでは、位置情報分析と連動したデジタル広告のセグメント配信も可能です。
- 特定エリアの来訪者に対するセグメント配信
- 店舗周辺の通行者に向けたタイムリーなアプローチ
- リピート率や広告接触後の来訪分析など効果測定まで一気通貫
\ NTTドコモのスマホデータ活用 /
人流データ分析でわかること
人流データを分析することで、単に「何人来たか」を超えて、人々の動き・滞在・移動パターンを多角的に可視化できます。リアルタイムで変化する人の流れを捉えることで、マーケティング戦略や施設運営、都市設計において精度の高い意思決定が可能になります。
ここでは、人流分析によって明らかになる主なポイントを紹介します。
エリアごとの滞在人口・通行量
人流データを活用することで、特定エリア内に「どれだけの人が滞在しているか」や「どのルートを通っているか」といった定量的な情報を把握できます。
例えば、駅前や商業施設、観光地、交差点などにおいて、以下のような情報が明らかになります。
- 滞在人口の規模と分布(例:15時台に○○広場に500人滞在)
- 主な通行ルートや導線(例:A通り→B施設→C出口へ向かう流れ)
- 通行量のピークと閑散エリアの特定
これにより、販促活動の場所選定や店舗の出店計画、警備配置の最適化などに役立ちます。
時間帯別・曜日別の傾向
人流データは、時間や曜日による変化を詳細に捉えることができます。これにより、以下のような「時間軸」に関する傾向を把握できます。
- 平日と週末での人流パターンの違い
- 朝・昼・夜など時間帯別の来訪状況
- 特定イベント開催日や祝祭日などの変動要因
たとえば、昼休みの時間帯に周辺ビジネスマンが多く集まる場所や、週末になると急激に来訪が増える観光スポットなどが明らかになり、マーケティングや施設運営において最適なタイミングを選定できます。
居住地・来訪元の推定
スマートフォンの位置情報などを活用することで、人々がどのエリアから来ているか(来訪元)や、推定される居住エリアを把握することも可能です。
これにより、次のような分析が可能になります。
- 来訪者の主な出発エリア(例:○○市からの流入が多い)
- 広域からの来訪か、近隣地域中心かの判断
- リピーターや一見客の傾向(何度も同じエリアに来ているか)
商圏分析やターゲット広告の配信エリア最適化、交通インフラの設計などに応用されており、より戦略的な施策立案に貢献します。
人流データの主な活用シーン
人流データは、業種や目的を問わず、さまざまな分野で活用が進んでいます。人の動きを可視化・分析することで、現場の課題解決や戦略立案に役立ち、データドリブンな意思決定が可能になります。
このセクションでは、代表的な活用シーンを4つ紹介します。具体的なユースケースを通じて、人流データがどのような価値を生み出すのかを見ていきましょう。
商業施設・小売店における店舗戦略
人流データは、店舗の立地選定や販促戦略の設計において重要な判断材料となります。
- 出店候補地の来訪者傾向を事前に把握し、見込み客の多いエリアを選定
- 館内の導線や滞在エリアを分析し、商品配置やPOPの位置を最適化
- イベントやセール施策前後の来店数変化を可視化し、効果測定に活用
これにより、売上の最大化だけでなく、回遊率や滞在時間の向上にもつながります。
観光地・自治体における回遊分析・混雑対策
地方自治体や観光地では、来訪者の動線や滞在傾向を把握することで、より魅力的で安全な観光体験の提供が可能になります。
- 主要観光スポットの混雑時間帯の可視化により、分散誘導施策を実施
- 複数の観光拠点をつなぐ回遊性の分析により、観光ルートの改善
- 観光施策やイベントの効果測定として、来訪者数の推移を定量化
また、災害時の避難経路把握や、地域振興のためのデータとしても活用されています。
不動産・都市計画への活用
都市開発や不動産投資の現場では、人流データがエリアの魅力度や将来性を示す客観的指標として活用されています。
- エリアの昼間人口・夜間人口の違いや変動を分析し、土地利用計画を検討
- 再開発エリアでの人の流入傾向の変化を定点観測
- 商業施設・住宅開発において、最適な施設配置や動線設計を支援
これにより、事業計画の妥当性を高め、資金投入のリスクを軽減することが可能になります。
イベント運営や広告出稿の最適化
イベントの集客や広告効果の測定にも、人流データは非常に有効です。
- イベント前後の人の流れの変化を可視化し、動員効果を定量的に評価
- 特定の広告看板の近辺における人流量や滞在時間を測定し、効果的な出稿面を選定
- スポンサー企業への報告資料として、来場者の傾向や居住エリアを提示
特にOOH(屋外広告)や交通広告の分野では、従来感覚的だった「人通りの多さ」を、数値に基づいて説明できる点が重視されています。
人流データ分析のメリットと導入効果
人流データ分析は、これまで見えづらかった「人の動き」を数値化・可視化することで、企業や自治体の意思決定を支援します。戦略の裏付けとなる定量データを得ることで、より効果的な施策展開が可能となり、結果的に売上や満足度の向上にもつながります。
ここでは、人流データ分析がもたらす主な3つのメリットを詳しく紹介します。
仮説検証や意思決定の精度向上
人流データの最大の強みは、直感や経験だけに頼らず、定量データに基づいて仮説を検証できることです。
たとえば、「この時間帯は人通りが多い」「このエリアは集客力が高い」といった仮説を、実際の人流データで裏付けることが可能になります。これにより、次のような効果が得られます。
- 勘に頼らず、データに基づいたロジカルな判断ができる
- 社内・関係者への説明責任や合意形成がスムーズに進む
- 新規施策における失敗リスクを最小化できる
分析の精度が高まることで、施策の成功確率も上がり、PDCAの回転速度が速くなります。
集客や売上の改善
人流分析を活用することで、集客力の強化や売上向上にも直結する成果が得られます。
具体的には以下のようなアクションが可能になります。
- 高人流エリアを特定し、効果的な広告出稿やイベントを展開
- 混雑時間帯を避けたキャンペーン実施により、顧客満足度の向上
- 回遊率や滞在時間の改善により、一人当たり売上(UPT)の増加
実際に、商業施設や観光地では、人流データをもとに施策を改善した結果、前年比で売上が数十%伸びた事例もあります。
データドリブンなマーケティング施策の実現
マーケティングの分野でも、人流データはターゲット精度を高め、ROIを最大化するための重要な資源となります。
- 「どのエリアの誰に向けて、いつどんな情報を届けるか」を可視化
- 実店舗の動きとデジタル広告を連携させたOMO(Online Merges with Offline)戦略の実践
- 外部要因(天気・イベント・交通状況)との相関を分析し、最適な配信タイミングを見極め
こうした施策によって、従来の一斉配信型マーケティングから、行動ベースの精緻なコミュニケーション設計へと進化させることができます。
人流データ分析を支援する主なツール・サービス
人流データを活用するには、精度の高いデータソースと、それを効果的に可視化・分析できるツールの導入が不可欠です。現在では、さまざまなベンダーが人流分析に特化したプラットフォームやサービスを提供しており、目的や予算に応じて最適な手段を選ぶことが可能です。
このセクションでは、代表的な人流分析ツール・サービスを3つのカテゴリに分けて紹介します。
民間の位置情報解析プラットフォーム
最も柔軟で高精度な人流分析を実現できるのが、民間企業が提供する位置情報解析ツールです。主にスマートフォンアプリから取得したGPSデータを匿名で集計・分析しており、リアルタイム性や粒度の高さが特長です。
主なプラットフォーム例
- docomo data square
通信キャリアのデータを活用した分析、人流や商圏分析に加え、セグメント配信が可能。 - Location Analyzer
商圏分析や広告効果測定に強み。地図上での可視化も直感的。 - X-Locations
時系列での人流変化、滞在時間、回遊分析が可能。 - KDDI Location Analyzer
通信キャリアのデータを活用した広域な人流把握ができる。
通信事業者や地図会社によるソリューション
NTTやKDDI、ソフトバンクといった通信キャリアや地図系企業も、人流データを活用した法人向けソリューションを展開しています。通信インフラやナビデータをもとにした広域な人流把握が可能で、社会インフラとの親和性が高いのが特長です。
主なサービス例
- モバイル空間統計
年齢・性別などの属性を含む分析が可能 - People Flow解析
詳細な地図情報と連携したルート解析に強み - Agoopの人流データ
商圏・観光・イベントなど多用途で活用されている
オープンデータの活用とその限界
国や自治体が公開しているオープンデータも、無料で利用できる手軽な選択肢です。たとえば、国土交通省の「人流データセット」や、東京都の「オープンデータカタログ」などで、人流傾向や来街者数の概況が確認できます。
メリット
- 誰でも無料で利用可能
- 地域振興、学術研究、行政資料などで活用
注意点
- データの更新頻度や粒度が限られている
- 局所的・リアルタイム性に乏しいため、戦略的な施策立案には不向き
- 専用ツールとの比較で可視化機能が乏しい
そのため、簡易的な傾向把握や補助的な情報収集として活用しつつ、メイン分析には有償ツールを併用するのが一般的です。
人流データを活用する際の注意点
人流データは非常に有益な情報源である一方、活用には慎重な配慮と正確な運用が求められます。特に、個人情報の取り扱いやデータの誤読リスク、導入・運用のコストといった課題を軽視すると、逆に意思決定を誤ったり、社会的信用を損なったりする可能性もあります。
このセクションでは、人流データの導入・活用にあたって特に注意すべき3つのポイントを解説します。
プライバシー・個人情報保護の対応
人流データは原則として個人を特定しない統計的・匿名化された情報を扱いますが、それでも「位置情報」というセンシティブなデータを活用する以上、プライバシー保護への配慮は必須です。
- 位置情報取得に際しては、ユーザーの同意取得が必要
- 分析に用いるデータは、匿名化・非特定化処理が行われているものを選定
- GDPRや日本の個人情報保護法など、各種法令への適合性確認も重要
とくに行政や大企業が導入する際には、第三者提供の有無やデータの保管体制も問われるため、提供元の信頼性と情報管理レベルのチェックが欠かせません。
分析結果の読み解きと誤解のリスク
人流データは「人の動き」を視覚的に示してくれますが、その背景や因果関係を正しく読み解くことができなければ、誤った意思決定を招く恐れがあります。
- 人の流れが増えた=売上が上がるとは限らない
- 特定の時間帯に混雑している=人気があるとは限らない(例:通過するだけの可能性)
- 属性情報や交通要因など、周辺データとの併用が重要
また、グラフやヒートマップの視覚情報に頼りすぎると、見た目の印象に引きずられて誤解するケースもあります。データを鵜呑みにせず、目的に応じた指標設計と丁寧な解釈が求められます。
導入・運用におけるコストや体制の課題
人流データの導入には、ツール利用料やデータ取得費用だけでなく、人的リソースや運用体制の整備も必要になります。
- 有償ツールは月額数万〜数十万円規模になることも
- 専門的な分析スキルが必要なケースもあり、社内に適切な人材がいないと活用が進まない
- 単発で終わるのではなく、継続的なデータ運用やPDCAの体制構築が重要
特に中小企業や自治体においては、「導入して終わり」にならないよう、目的に応じた段階的な導入・学習コストの考慮がポイントです。
まとめ
人流データは、単なる「人の多さ」を可視化するものではありません。「どのエリアから、どのタイミングで、誰が、どのように動いているか」という行動の本質を捉えることができる、極めて強力なマーケティング資源です。
今や、広告施策や出店計画、観光戦略は、感覚や経験だけでは通用しない時代に突入しています。D2C Rでは、NTTドコモの「docomo data square」を活用し、スマートフォン位置情報による精緻な人流分析をはじめ、マス広告とデジタル広告を統合したプランニング・運用設計を一貫してご支援しています。
- 人流データに基づいた戦略立案
- ターゲットに最適化されたセグメント広告配信
- 効果検証と改善提案を軸にしたPDCAの高速運用
人流データの活用やdocomo data squareの導入をご検討の際は、ぜひお気軽にD2C Rまでお問い合わせください。