まだ勘と経験で浪費してるの?ファクトベースで高度化するアプリマーケティング【#Marketing LIVE Vol.5レポート前編】
CANVAS編集部
先日、D2C Rが主催したセミナー『#Marketing LIVE Vol.5』が11月8日(金)に行われました。
#Marketing LIVEは、マーケティングの最前線を走る方々にご講演いただく、担当者の“生の声”が聞けるセミナーです。
5回目となる今回のテーマは「クラシル・FiNC・ココナラから学ぶ!〜アプリによるユーザーエンゲージメント向上の外せないポイントとは〜」と題して、テクノロジーを活用した新たなビジネスモデル、新たな市場を構築され、マーケティングにおいても従来の施策と新たな施策を融合させて堅調にビジネスを拡大している舞台裏を赤裸々に語っていただきました。
冒頭は、世界最大手のモバイル市場データを提供しているApp Annie Japan株式会社にてカントリーディレクターを務める向井 俊介氏より、モバイルのビジネス環境の現状に加え、各企業がこのモバイル領域でビジネスをしていく上での重要なポイントを解説して頂きました。
まだ勘と経験で浪費してるの?ファクトベースで高度化するアプリマーケティング
はじめに
[向井氏]App Annieはデータを提供している会社ですが、データと相反するところに経験や勘があると思っていて、そこだけに頼ってビジネスをしていらっしゃる方が多い印象です。しかしモバイルやデジタルの世界においては変化が早く歴史も浅いので、根拠のない意思決定による失敗が多いため、ファクトベースで考えることをビジネスに取り入れていくという方向性が高まっていくことを期待して、プレゼンをさせていただきます。
まず、ファクトが大事だと思っていただけるようなクイズを用意しました。
これはベストセラーになったファクトフルネスという本からの引用です。世界の有識者のほとんどの人が20%と答えるそうで、実際この会場の人たちも例外じゃないかなと思いますが、Aは間違いだということがデータで実証されています。正解は60%で、世界は明らかに豊かになっているというデータを多くの有識者だけではなく我々も知らないわけです。
このような認識の齟齬が生まれる多くの原因は、メディアによるものだ、と言われています。
例えば、食事をまともに取れない人がこんなにいる、といった内容のメディアやクリエイティブ目にすることが多いと思いますが、潜在的に、世界はまだ貧困層が多いと思い込みます。
日々目に触れる、もしくは耳に入ってくる情報を元に醸成される価値観が思い込みとなって、世の中はまだまだ貧困層が多く、かつ増えていると思い込むのです。
今回、モバイルを活用したマーケティングの話をするなかでポイントだと思っているのは「価値の再創造」「顧客を理解して顧客の声を聞きながら一緒になって価値を創造していくこと」です。
もはや今のマーケティングは一方通行ではないのです。
この時にファクトが大事ということにつながります。生活者であり、ビジネスパーソンであるみなさんは慣れ親しんでいるアプリをよく捉えがちだったり、知っているが故に偏ってしまいます。だからこそ、ファクトをもとに物事を見ていかなければならないのです。
顧客は何に時間を割き、何に反応するのか。どういう属性の人達がこのサービスにお金を払っているのか。こういった「生活者理解」をすることがこれからのマーケティングに必要な要素だと思います。
近年のサマリー
ここ最近も、全世界でモバイルは依然として成長中です。
未だに1兆3千億円のお金が流れていて、年率10%で成長しています。1兆円オーバーの市場で年率2桁の成長をしているものは他に日本にはないです。
ただ、新規ダウンロード数はこの2年ほど微減のトレンドとなっています。
日本国民は積極的にアプリをダウンロードしなくなってきていますが、その他の国は軒並み成長を続けていて、グローバル全体でも伸び続けています。
また、生活者が、24時間の中でモバイルに触れている時間は平均3時間程度です。
ネット世界と関わってくると4、5時間となってきますが、この3時間の時間の取り合いを考えなければならないのです。
さらに、日本人はデバイスに平均100個のアプリを入れていますが、ひと月に立ち上げるアプリは35個。1日9個が平均値のため、毎日使ってもらうのは至難の業です。
しかしこの3時間を取るために、マーケティング目線としてこれをKPIにおいてもよいのではないでしょうか。
さらに、具体例を用いてApp Annieのデータでマーケティングにおいてどんなことがわかるのかを説明します。
今年の1月~6月の上半期でフードドリンクの新規のダウンロード数がマクロ全体で伸びました。
それを押し上げたアプリがあります。某外食企業のアプリですが、半年のダウンロード数成長率はなんと327%成長です。
この企業のプレスリリースや、ファンによるブログにいろんなキャンペーンがまとめられています。
App Annieのデータでダウンロード数を見ると、2箇所で大きく24倍、34倍に跳ねているポイントがあります。日付ベースでググると一発で出てきますが、アプリDLによる無料クーポンと、100円で提供するクーポン配布のキャンペーンとばっちりタイミングが合っています。このクーポン施策は新規ユーザー獲得の施策として、これは大成功と言っていいと思えますが、大事な点があります。
それは、アプリはインストールされてから継続的に立ち上げてもらっていなければ無価値だということです。
どのぐらいユーザーが継続的に使ってもらっているのかという指標が、例えばこのウィークアクティブユーザー数です。
App AnnieのデータでGoogle Playのデータを紹介しますが、引っ張ってきていますが、WAUがキャンペーンの前後で4倍に推移してこのまま定着して動いています。
マーケターとしてユーザーアクイジションは大事なKPIの1つですが、そのために他社がどういうキャンペーンを行い、その結果どのぐらいユーザーアクイジションができ、その後にユーザーがどのぐらい定着して推移しているかというところまで見るのは、言うまでもなく大事なところです。
こののキャンペーンに一体いくらのマーケティングコストが出ていたのかはわかりませんが、明らかにユーザーが定着したのがデータから見て取れました。
まとめ
物事を見る時や、判断をするときにこれの根拠は何?という視点が大事です。
根拠を得るというアクティビティを日々の業務に入れることでマーケティングの精度が向上する、とセッションを締めました。
後編では、App Annie Japan向井氏をモデレーターに迎え、クラシル、FiNC、ココナラのマーターによるパネルディスカッションの模様をお届けします。
デジタルマーケティング情報を発信する『CANVAS』の運営&編集担当。中の人としてTwitterはじめました(@canvas_d2cr)。テキストは標準語ですがしゃべると関西弁。オンライン社内報「R-ibrary」も兼務で運営担当をしています。