Tips 2020.01.15

アプリによるユーザーエンゲージメント向上の外せないポイントとは【#Marketing LIVE Vol.5レポート後編】

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CANVAS編集部

先日、D2C Rが主催したセミナー『#Marketing LIVE Vol.5』が11月8日(金)に行われました。

#Marketing LIVEは、マーケティングの最前線を走る方々にご講演いただく、担当者の“生の声”が聞けるセミナーです。

5回目となる今回のテーマは「クラシル・FiNC・ココナラから学ぶ!
〜アプリによるユーザーエンゲージメント向上の外せないポイントとは〜」と題して、テクノロジーを活用した新たなビジネスモデル、新たな市場を構築され、マーケティングにおいても従来の施策と新たな施策を融合させて堅調にビジネスを拡大している舞台裏を赤裸々に語っていただきました。

今回は、「アプリによるユーザーエンゲージメント向上の外せないポイントとは」の後編として、パネルディスカッションの様子をお届けします。

この記事を読んでいる方へ

▼SNS×広告 意識調査レポート
・年代別の広告媒体への印象
・マス広告
・屋外広告
・SNS広告
・Z世代と他世代の比較
など広告担当者必見の内容になっています。

詳しく知りたい

アプリによるユーザーエンゲージメント向上の外せないポイントとは

はじめに

(左から)モデレーター
App Annie Japan株式会社 カントリーディレクター 向井 俊介氏

パネラー
株式会社FiNC Technologies 執行役員 CCO マーケティング本部 本部長 クリエイティブ部 部長 小出 誠也 氏
dely株式会社執行役員 野村 知己 氏
株式会社ココナラ マーケティンググループ 集客チーム 宍戸 誠一 氏

[向井氏]まずは自己紹介からお願いします。

[小出氏]世の中にあるヘルスケアアプリは一般的に体重管理や食事管理などの単一的な機能を持ったアプリが多く、世界ではそういったヘルスケアのアプリが32万ほどあるといわれています。FiNCではカラダに関わる機能をすべて1個のアプリに集約しているため自分のカラダに関わるデータを一括で管理できます。これらの入力されたデータをもとに、それぞれ個人に合ったコンテンツもソリューションとして提供しています。またそれだけではなかなか健康管理のモチベーション維持は難しいため、僕らが大事にしている要素としてインセンティブの付与があります。ログをつけたりコンテンツを閲覧するなどの健康行動に対してFiNCのモールで使えるポイントを付与しているのでカラダに良いものを安価に購入する事ができます。カラダのすべてをひとつのアプリで管理できるようなサービスを目指しています。

[野村氏]クラシルというレシピ動画サービスのマーケティングを担当しています。いわゆる広告出稿などのプロモーション領域だけでなく、レシピ考案や動画の編集・制作・デザインといった、ユーザーにどのようなコンテンツを届けるかといったところまでが管掌範囲です。

[宍戸氏]ココナラは物ではなく、スキルマーケットというサービスで提供者と依頼者をつなぐプラットフォームです。色々とユニークなサービスが出品されていて、あなたの愚痴を聞きますといった少し変わり種のサービスなども出品されていてとても面白いサービスです。

各マーケットにおけるポテンシャルの大きさ

[向井氏]日本の人口は減っていき、経済力も落ちていくと統計学的にもいわれています。30年後には労働生産人口が人口の52%ともいわれています。
いろんな大企業たちが縮小していったり、いろんなお店が閉鎖したり、あまり良くないニュースが最近多いです。
その中で、お三方は日本のマーケットにとてもフォーカスしてビジネスをしてらっしゃると思います。お伺いしたいのは、そういう時代の中でこそ担当されているサービスの市場は日本においてポテンシャルがまだまだ大きいと見ている、ということでしょうか?

[宍戸氏]市場規模としてはシェアリングエコノミーというカテゴリでお話しすると、人・モノ・お金・移動・スペースなどがあるのですが、その中で僕らは人というジャンルに該当するサービスです。
2019年の段階で、ある調査会社によると2030年までに11兆円規模になるそうです。
今は1.8兆円ぐらいなので、どちらかというと働き方改革が進んでいき、副業解禁などいろんな形で日本が変わっていく中で、わりと国内で順調に伸びていくのではないかと今のところは思っています。

[野村氏]私たちの場合、既存サービスであるレシピ動画サービスについては新しい市場をつくっているというより、既存の市場のシェアをとりにいくという方が正しい見方かなと思います。
老舗のサービスであるクックパッドは月間のアクティブユーザーで約5,500万人です。わたしたちが「レシピ」という領域で現在獲得できるで市場ポテンシャルはこのくらいだと捉えています。
ただ新しい市場も開拓せねばならないので、食のコマースなども本格的にやっていきたいなと思っています。

食のコマースとは、例えばネットスーパーなどです。数十兆円の市場規模なので、どのように取りに行くかが重要になると考えています。

[小出氏]ヘルスケア市場が伸びるといわれています。2020年には37兆円規模、2030年には日本でも医療が最大の産業になると言われていますし、世界規模でいうとさらに大きくなります。
今現状でも日本では人の介護がないと生きていけない期間が平均で11年あるといわれています。とても長い期間辛い思いをして生きなければならないのでその期間を短くしたいですし、僕らはヘルスケア、予防の領域で普段の運動、栄養、休養の生活習慣を変えるということををずっと掲げています。
生活のいたるところにある身体、健康データをもとに様々な形のソリューションを提示したいという世界観をさらに広げていきたいと思っています。市場可能性としては大きい産業だと思います。

[向井氏]何故これを質問に入れたのかというと、マーケティングをやっていく上で、数値で自分たちの市場を見ながらやっていくのは基本路線だというところも改めて感じていただきたかったからです。

モバイルによる価値創造とは

[向井氏]次の質問ですが、新しい価値創造はお客様と一緒にやっていくという概念があるなかで、皆さんはどんなふうにモバイルによって新しい価値創造、価値提供をしていこうと考えているのでしょうか。

[小出氏]モバイルなど、ウェアラブルも含めたデジタル機器が身近になっている分、今自分たちがおかれている状況が以前に比べてサービス側も把握しやすくなっている状況です。それに対して提示できるレコメンデーションの数が多くなってきているため、より精度の高いものも求められるしその可能性も大きくなっているかと思います。。
例えば、この状況でとても眠い人に対して、この運動をすれば目が覚めるという情報を提供できるかもしれないのです。

[宍戸氏]僕の領域はどちらかというとアクイジションの領域なので、そこで考えていくと2つかなと思っています。
ウェブで獲得できないユーザーなどの新規顧客獲得が1つ。
2つ目は獲得したお客さんをいかにつなぎとめるのかという接着剤みたいな機能があるかと思っています。今のところは価値創造という大それたことではないのですが、ココナラで提起している分野です。

マーケティングを言語化する

[向井氏]マーケティングとは何をすることなのか、言語化してもらえますか?

[野村氏]私たちのサービスを使ってくださるターゲットユーザーをしっかり見定め、ユーザーの方たちが求めているものと私たちが提供できるものをフィットさせて、それを「正しく伝わるように」届けることだと思います。。

ユーザーが求めていることを正しく把握することは意外と難しいなと日々痛感しています。ユーザーインタビューでいただいた「こんな機能がほしい!」といった要望 をそのまま機能としてつくっても、実際には全く刺さらないなんてこともよくあります。なぜその機能がほしいのか、「本質的に解決すべきインサイトがどこにあるのか」を見極めるのが大事だと思っています

[向井氏]市場やターゲットを正確に理解するために工夫していることはありますか?

[宍戸氏]意思決定をする際にはかなりデータドリブンで検証を行うことが多いのですが、定量ばかり見ていてもインサイトがわからないと思うので、定性的な情報を取りに行くのはかなり丁寧にやっていますね。

[小出氏]定性的なところと定量的なところ、両方行っています。
定量的なところでいうと、ウェブ広告はPDCAがとても早くて回せるので、どういう言葉が刺さるのか、どういったサービスの見せ方が刺さるのかなどをものすごい数で検証できるのです。
例えばCMを作成する際にも2018年に1年間でデジタル上で配信を行った、2,000本以上の動画クリエイティブの成果の良いトップ10とアンダー10でどのような違いがあるのかを検証しました。そのデータを基にCMのクリエイティブに落とし込んでいます。定性的なところは一般的なN1調査、ユーザーインタビューなども行っています。
担当アプリではAARRRモデルの何を重視しているか

[向井氏]当然AARRRモデル※の中でも最初は新規ユーザーの獲得が大事かと思いますが現在はいかがでしょうか?

※AARRRモデル

A:Acquisition 顧客
A:Activation 活性化
R:Retention 継続
R:Referral 紹介
R:Revenue 収益

[小出氏]どれも大切ですが、サービス当初から気にしているのはずっと継続率です。入ってきたユーザーがどう滞留してくれるのか、経路ごと、クリエイティブ毎にも入ってくるユーザーの質は変わってくるので常に意識して広告配信も行っています。流入させる質を落とせば数も稼げますがそこはシビアに見ています。なのでこの中でどれが大事かと言うと、サービスの特徴上、継続が一番です。

[野村氏]あえて言うなら、アクイジションです。ダウンロード数も当然一つのKPIとしてウォッチしているのですが、最終的に伸ばしたいのは日々使ってくれるユーザー数なので、MAUやDAUを最終的な指標として見ています。リテンションも大事ですが、一定規模までやりきると、なかなか大きく改善するのは難しくなってくるので、どちらかといえばコントロールしやすいのは新規ユーザーを増やすことだと思っています。入と出のバランスを見ながら、注力する領域など意思決定を行っていますね。

[宍戸氏]リテンションだと思っています。ココナラのユーザーは130万人を超えています。まだまだアクイジションの方にも注力していますが、100万を超えるユーザーがいるのであれば、出品者と購入者のマッチングをどんどん発展させて、獲得したユーザーが継続することを重視しています。

広告に期待すること

[向井氏]広告は認知を取ったり、ブランディングだったり、ユーザー獲得だったり、休眠ユーザーを復帰させたり、いろんな目的で企業さんが使ってらっしゃると思います。みなさんは広告に何を期待されていますか?

[宍戸氏]ココナラの広告状況でいうと、獲得型の広告がメイン施策です。
もちろんまだまだ完全体ではないですが、獲得系の広告の利用はかなり高いレベルで最適化出来ているなと思っています。
そもそも出品者と購入者サイドがいて、僕ら側でいうと、新規ユーザーの購入者の数をより集めるというのがKPIです。

ココナラのサービスはかなり特徴的で、似顔絵作成のサービスを一点買うのと、ホームページ制作やアプリ開発をするサービスを一点買うのとでは、購入金額が10倍ぐらい違うので、CPAだけではなくROIも同時に成果を見ています。

マーケティング部隊から発信するという意味でのブランディングが弱いので、広告によって強化できたらとは考えています。

[野村氏]デジタルだとほとんど新規獲得です。期待することとしては直接、新規ユーザーをどれだけ獲得できるか というところです。クラシルの場合、SNSのオーガニックアカウントが強いので、そこが伸びていることで、特にSNS広告の獲得に好影響を与えている感覚があります。オーガニックアカウントをフォローしてコンテンツに触れ、一定の好意度が醸成された上で「アプリもあって便利だよ」と、広告が最後の後押しをしてあげるイメージです。

[小出氏]デジタル広告による目先の継続率の高いユーザー数の獲得も大事ですが、欲張りなので僕らはブランディングを並行して行っています。デジタルはターゲティングしやすく、セグメントが切りやすいので狙ったところに届けて獲得もしやすいです。ただ最近は中長期的なファン構築も意識したリブランディングやブランディングに投資しはじめています。同じようなサービスの内容であれば熱狂的なファンになるような、好きだと思ってもらえるサービスが最終的には残ると考えているからです。ヘルスケアの難しいイメージを覆すような、FiNC自体を好きになってくれるような、ビジョンやミッションを具現化したブランディングを続けています。

デジタルの世界でのマーケティングで大事な軸とは

[向井氏]このモバイル、特にスマホはこの10年ぐらいで、急激に世界中に浸透している中でも、マーケティングの根本的な部分はあまり変わらないと思います。
今の時代、インフラがさらに増強されたり、さらにデバイスがより良くなっていったり、あるいは生活者からするとよりそのコンテンツを楽しみやすい環境が整っていく中でさらにデジタルの世界でのマーケティングで大事な軸としてマーケターが持っておくべきことは何だと思いますか?

[宍戸氏]変える所と変えない所を明確にしておきたいなと個人的に思っています。変えない所でいうと、データドリブンのファクトを大事にすることですね。
変えるべきところは時間短縮です。アクイジションの方でいうと、投資対効果とはどんなものかということとか、数字の部分で、結構時間がかかったり手間がかかったりするので、いかに効率的にファクトを見つけに行けるかは効率的に施策を回していきたいです。

[野村氏]デバイスや事業内容に関係なく、誰に何を届けるかというコンテンツやプロダクトの部分からマーケターがしっかり関わっていくということが、一番大事なのではないかと思っています。
例えばクラシルの場合はレシピがバリエーション豊富で動画もわかりやすい、というのが、ユーザーに提供している一番の価値です。
時折原点に立ち返って、サービスとして本質的な価値を届けられているかを見直すことも重要です。

[小出氏]FiNCのマーケティング部が掲げているミッションに、FiNCに関わるすべての人の真の理解者であるということを言っています。
ここで言っている関わる人というのは、顧客もそうですし、うちの社員も全部そうなのですが、サービスを作る人、それを使う人の本当の意味での理解者になってそれを伝えられる人達になりたいと思っています。なので、すべての事に対して高いアンテナを常に張って、本質を見抜きながらカスタマーとのコミュニケーション設計することが大切だと思ってます。

まとめ

今回の#Marketing LIVE Vol.5では、冒頭にApp Annie の向井氏よりモバイル市場の現状や、事例を用いてデータによるファクトをビジネスに活かすことの大切さを解説いただきました。

また、本編ではクラシル・FiNC・ココナラといった人気アプリのマーケターの皆さんからアプリのユーザーエンゲージメントを向上させるためのマーケティングの考え方についてディスカッションいただきました。

ご来場者様からも生のマーケティングの話が聞けてデジタルマーケティングに対しての理解が深まったなどといったご好評の声をいただくことができました。。

今後もD2C Rはマーケティングセミナー「#Marketing LIVE」を開催してまいります。

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・年代別の広告媒体への印象
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・屋外広告
・SNS広告
・Z世代と他世代の比較
など広告担当者必見の内容になっています。

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広報の川向です。デジタルマーケティング情報を発信する『CANVAS』の運営&編集担当。中の人としてTwitterはじめました(@canvas_d2cr)。テキストは標準語ですがしゃべると関西弁。最近つけてもらったあだ名はゲリラ広報。

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