Tips 2021.05.11

【企画分解のじかん Ver.1】『感電』MV配信企画を勝手に大解剖

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池邊 沙也加

この記事を読んでいる方へ

▼SNS×広告 意識調査レポート
・広告表現別の印象
・インフルエンサー/コラボ/UGC風
・好きな広告
・煩わしい広告
・買いたくなる/シェアしたくなる広告
などZ世代の実態を知ることができる内容です。

詳しく知りたい

企画分解、はじめます

 

みなさん、こんにちは。D2C Rストプラの池邊です。

 

「ストプラって何してるの?」とよく聞かれます。戦略を書いたり、企画を作ったりしている…のですが、同じくらい情報収集に時間を割いたりしています。自分の中で思考が凝り固まると戦略も独りよがりになりがちなので、情報収集と咀嚼は大切な業務の一環です。そして何より、世の中には様々な素晴らしい広告や企画、プロダクトが溢れていることに気づかされます。

 

この記事では、私が心動かされた世の中の様々な事例を“分解”して、魅力の源を探ってみようと試みます。取り上げる事例は弊社と一切関わりはありません。あくまで私の主観と考察(妄想)を基にした内容であり、もはや半分趣味の領域です。お暇なときにでも読んでいただければ幸いです。

 

 

企画分解の進め方

 

分解の手順は、大きく3STEPに分けました。

 

 

分解対象を設定


分解する企画を選びます。

内容は何でも良いですが、「自分が心を動かされた、感動した対象」を選びます。加えて、目標達成のハードル/軸を定めて、モチベーション維持を心掛けます。

 

概要/反響のリサーチ


選んだ企画についてググり倒す時間です。

検索エンジン、SNS、分析ツール、周囲のクチコミ…あらゆるものを使って企画の輪郭を掴みます。ちなみに、まだこの時点で本当の企画分解は始まっていません。企画分解を始めるための素材/きっかけ集めの時間です。逆に言えば、後述の③に繋がる発想の種が既にあればスキップします。

 

分解FMTへの落とし込み

ここからが本来の企画分解です。あらかじめ規定した要素に企画を分解し、その意図・狙いを自分なりに考察/解釈します。本記事では、以下項目に沿って企画を分解します。

 

 

以上が、本記事における企画分解の手順です。

次の項目では、実際にこのSTEPを踏みながら企画分解を行ってみたいと思います!

 

企画分解事例:米津玄師さん/『感電』 MV公開企画

 

今回取り上げるのは『MIU404』主題歌としても人気を誇った米津玄師さんの楽曲『感電』が、MV公開時に行ったYoutubeチャンネルジャック企画です。

 

※重ねて申しますが、本企画と弊社との関わりは一切ありません。この後のリサーチ内容はあくまで一般公開されている情報から収集し、分析もあくまで主観的なものです。ご了承いただけますと幸いです。

 

企画分解対象の設定

 

私はこの企画を知った時本当に感動しました。それが選定理由です。今回、勝手ながらそのすごさが少しでも伝えられれば…と思います。加えて長期的な継続を目指し「あらゆる業界の事例を企画分解する」というテーマを設定し、グラフで事例を溜めていこうと思い立ちました。

週1本と想定しても全部作るのに1年半かかったのでモチベ維持になるかは正直疑問ですが、ログを見返すためにそっと使っていこうと思います。

 

概要/反響のリサーチ

 

概要については、「何を」「どんな流れで」「誰に」実施したのかという3軸でリサーチしました。まとめると以下の通りです。

 

何を:Youtubeアカウントのメディア化/話題化施策

新曲MV公開のタイミングで、米津玄師さんのアーティストアカウントの動画サムネイル及びコメント欄をジャック。

404 NOT FOUND」と記された同じサムネイル画像と、意味深な記号が並ぶ状態を創出。

 

どんな流れで:リアルタイム感で楽曲とドラマの世界をシームレスに感じさせる流れ

楽曲の先行配信でMVへの期待感を高め、主題歌として起用されていたドラマ『MIU404』の放映時間と連動した分刻みのジャック進行、MV公開。

 

誰に向かって:楽曲コンテンツ経済圏のユーザーは全てターゲット

米津玄師さんのファンはもちろん、ドラマファンまで訴求ターゲットに巻き込み。

 

反響については、「受賞アワード」「メディア」「SNS/その他」3軸で同様にリサーチしています。

 

 

受賞アワード

ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS にて

メディアクリエイティブ部門のグランプリ・総務大臣賞

ブランデッド・コミュニケーション部門A(デジタル・エクスペリエンス)ゴールド

ブランデッド・コミュニケーション部門B(プロモーション / アクティベーション)ブロンズ

を受賞。総ナメですね…!

 

メディア

音楽メディアを中心に、MV、ジャック、ドラマ軸でおよそ760/週の掲載数を今回のリサーチで確認。

※Googleニュースにて、検索Hit件数をカウント

 

SNS/その他

ジャック当日、意味深なコメント欄の謎を考察する人中心に盛り上がり「モールス信号」でトレンド入り。アーティスト/ドラマ両軸のファンから大きな注目。さらにMV動画自体も2時間足らずで100万再生を記録、米津玄師さんご自身の最速記録を更新。

後日のアルバム発表時のクチコミ量は企画時を大きく凌駕する勢いで、事前の企画により楽曲への注目が高まっていたと推測。

 

以上のようなリサーチを経て、いざ分解FMTに落とし込みを進めます。

 

分解FMTへの落とし込み

 

先ほど紹介した4項目に沿って、企画分解をします。

 

ブランド(企画対象)のメッセージ

今回のブランドは、楽曲『感電』及び収録アルバム『STRAY SHEEP』、そして米津さんご本人と設定しました。
米津さんといえばどこか哲学的な空気を纏ったアーティストだと感じます。楽曲を聞くリスナーの心に、形にならない問いを投げかけるような余白/行間の詰まった作品が多い印象です。迷える羊、と訳せる今回のアルバムも、やはりリスナーに何かを考えさせるようなメッセージが込められているのでは…と仮定しました。

 

企画の狙い

定量的にはMV及び、収録アルバムの認知最大化であろうと思われます。
そのためには、より大きなπのターゲットを巻き込む必要があります。
アーティストファン層だけでも絶大な規模を誇るはずですが、加えて「主題歌良いな、と思いながらなんとなくエンディングで聞いている」という視聴者層にも確実な興味を抱かせる狙いがあったのではないでしょうか。
だからこそドラマを挟み込む形で、SNSでの話題化を視野に入れた企画を実施したのではと考えました。

 

生活者へのメッセージ

「アーティストファン」「ドラマファン」両軸のメッセージを考えます。

 

アーティストファン:「お祭り感のあるMV公開で、今までの先行視聴会のようなワクワクを味わって欲しい」

 

米津さんはいつもMVの先行視聴会というイベントを実施していたのですが、今回の「感電」ではそれがありませんでした。オンライン上でも、そんなファンの期待に応えたいというメッセージが企画に込められていたのではないかと思います。

▼アーティストファンの方のツイート抜粋

 

ドラマファン:「伏線考察や謎解きを通して、楽曲もドラマ世界観を構成するコンテンツとして楽しんで欲しい」

 

本ドラマは初回からあらゆる伏線が張り巡らされ、既にドラマファンたちは「あらゆる情報にアンテナを張って、この先の展開を考察したい!」という思いで放映や公式Twitterアカウントの情報発信を楽しみにしていました。当日は公式アカウントからも企画の発信がされており、「MIU“404”に関わる“謎”」の訴求と「ドラマ視聴後直後、まだその世界にひたれるイベント」の訴求を同時にやってのけたと言えます。

▼ドラマ公式アカウントからの企画発信ツイート

▼ドラマファンの方のツイート抜粋

 

 

感動ポイント

ずばり、「アーティスト・ドラマ両軸の魅力が本当に継ぎ目なくつながった企画」であることです。

 

楽曲だけに触れている人から見れば、「404 NOT FOUND」というWEBエラーを模したギミックは「感電」「STRAY SHEEP」というKWに違和感無く紐づいており、モールス信号などの遊び心は先行上映会に変わる新しいイベントとして映ります。

 

一方、ドラマだけに触れている人から見ても「404」というKWとドラマに絡むように進行する謎解き・考察、放映直後に始まるMV解禁という流れは、ドラマの世界観を肉付けするイベントとして成立します。

 

施策自体はアカウントをジャック&謎かけ発信というシンプルな構成ですが、だからこそ緻密に計算し尽くされたファンとのコミュニケーション、周辺設計を感じました。分刻みの公開スケジュールも本当に難しいはずなので、感嘆せずにはいられません…!

 

企画分解を終えて

 

はじめての分解、いかがでしたでしょうか?

ここまで読んでくださったみなさまに、この企画のすごさ、すばらしさは伝わったでしょうか。新しい気付きや発見があったでしょうか。また心動かされる素晴らしい企画に出会ったら、分解を試みるつもりです。

 

次回の記事でまたお会いできることを願っております。

ありがとうございました!

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池邊 沙也加

ストラテジックプランニング部 ストプラチーム。ゲームディレクションやWEBコンテンツ制作などの企業を経て、D2C Rに入社。ユーザーモーメントやペルソナ分析を軸に、感情を大切にした戦略を書きます。ごはんとお酒で大体幸せ。在宅勤務のリフレッシュに、ネットサーフィンのお供に。読みやすくて為になった気がする記事を発信します。

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