「Z世代はタイパ志向」は本当? Z世代の声から紐解く”精神的空腹感”とは|ゼットモ
はじめに
みなさんこんにちは!Z世代研究プロジェクト『ゼットモ』です。
昨今の若年層マーケティングにおいて、欠かせないキーワードとなった”タイパ(タイムパフォーマンス)”。
「Z世代は効率を重視し、1分1秒を惜しんで情報を詰め込む世代だ」と定義するメディアもあるほど、「効率」という言葉が強く浸透している昨今ですが、果たして本当にZ世代は効率だけを重視しているのでしょうか?
今回は、タイパをZ世代当人の目線で深掘りしていきます。
タイパ志向の実態と「ながら視聴」
そもそも、なぜ「Z世代=タイパ志向」というイメージが定着したのでしょうか。
タイパ志向の代表的な行動例としてよく挙げられる、「動画の倍速視聴」や「ながら視聴」に関して、実際にZ世代を対象にアンケートを実施したところ、多くのZ世代が倍速視聴やながら視聴を行った経験があると回答しました。
この結果からも、タイパ的な行動がZ世代に根付いていることは事実だと言えます。

また、「ながら視聴」の行動例を紐解くと、オンオフ横断型、デジタル完結型の2つの軸で分類することができます。

●オンオフ横断型の「ながら」
家事をしながら動画視聴
勉強をしながらドラマを見る
入浴しながらYouTubeを見る
ドライヤー中にYouTubeを見る
筋トレしながらPodcastを聴く●デジタル完結型の「ながら」
動画を見ながらSNS閲覧
生配信を見ながら別窓でYouTubeを見る
ネットショッピングをしながら動画を流す
コメント欄やSNSで反響を見ながらYouTubeを見る
また、倍速視聴やながら視聴を行った理由を聞くと、「効率を追い求めるため」という声がある一方で、「無音が嫌」「他ユーザーの感想を追いながら視聴したい」など、他作業の余白を埋めるために動画を視聴している事例と、動画をより楽しむために追加情報を収集する事例の2つの傾向が見られました。

このことから、タイパの行動例として挙げられる「動画の倍速視聴」や「ながら視聴」は実際に行われていますが、その理由はタイパ意識だけではなく、”精神的な空腹感”を満たすためのものであるとも考えられます。
タイパだけではない精神的な空腹感の重要性
では、なぜZ世代はここまで「精神的な空腹感」に敏感なのでしょうか。
ゼットモ内で「ながら視聴」について議論した際に、非常に興味深い会話がありました。
『日ごろはドライヤーをしながら動画を視聴しているけれど、新しいドライヤーやヘアオイルを買い換えた直後はドライヤーに集中するから動画は見ない』という声が上がり、メンバーの大半がそれに共感したのです。
同じ「ドライヤー」という行動にも関わらず、なぜ「ながら視聴」の有無が生じるのでしょうか?
メンバーに聞いてみると、「新しいドライヤーやヘアオイルを買った直後はその使用感を楽しみにしているので、暇を感じない」とのこと。
つまり、ドライヤー自体がルーティンワークではなくなっていることで、「ながら視聴」が行われなかったと考えられます。
この事象から見えてくるのが、”Z世代が求める精神的満足度の基準の高さ”です。
では、なぜZ世代は求める精神的満足度の基準が高いのでしょうか。
それは、Z世代が「エンタメネイティブ世代」であることが関係していると推測しています。
Z世代の多くは思春期の頃からスマホやSNSが身近にあり、成人するころには動画サブスクが普及するなど、「身近に無数のエンタメコンテンツがある状態」で過ごしてきました。
また、昨今ではAIの発達により、自身と親和性が高いコンテンツが自動で流れてくるSNSやサブスクも多数存在しており、”自動的且つ半永久的にエンタメコンテンツが流れてくる”状態で過ごしている傾向にあります。
いわば、上の世代と比較して触れるエンタメコンテンツの数や種類が多いことから、上世代と比較して「エンタメに対する満足度の基準」が高く設定されやすく、日常の退屈や間延び感を解消する手段として、無意識に「ながら視聴」や「倍速視聴」を選択しているのではないでしょうか。
倍速・ながら視聴しないコンテンツとは
そんなZ世代が倍速・ながら視聴をしない、単体でエンタメに対する満足度を満たせるコンテンツは何か、実際にZ世代にアンケートを取ると、「推しのライブ」や「初めて見る映画」など、間や余白も含めて楽しむコンテンツは倍速・ながら視聴されづらい傾向が見られました。

また、倍速・ながら視聴をするコンテンツでも例に挙がったドラマや映画については、”字幕で見たい映画””初めて見る作品”など。同じコンテンツでも見た回数や何を求めているかによって、倍速・ながら視聴の有無が変わる傾向が見られました。
前述した「エンタメに対する満足度」は同じコンテンツを何度も見返すことで低下していくと考えられることから、無意識のうちにコンテンツの鮮度を判断し、倍速・ながら視聴の有無を判断しているのかもしれません。
以上から、倍速・ながら視聴されにくいコンテンツを作るためには、余白・鮮度の2点に注力し、見返すたびに余白から新たな発見を得られる”噛めば噛むほど味がするコンテンツ”を意識して制作することが重要なのではないでしょうか。
精神的な空腹感を押さえたマーケティングとは
調査・分析結果を踏まえ、これからの若年層マーケティングにおいて「タイパや効率」を意識するだけでは、Z世代の琴線を揺さぶることは難しくなっています。
一方で、前述した単体で”精神的な空腹感”を満たせるコンテンツを目指すことが重要なのではなく、
①他コンテンツとの併用を見越したアプローチ
②倍速・ながら視聴されないコンテンツを目指すアプローチ
の2軸を意識し、状況に応じて使い分けることが重要と考えています。
①他コンテンツとの併用を見越したアプローチ
日常のルーティンワークや「ながら」を前提とし、邪魔にならない心地よい刺激として認知の隙間に溶け込むコンテンツ設計が重要です。
特に、ながら視聴をするコンテンツは”一度見たことがあるコンテンツ”が選ばれる事例もあることから、極端にショート化したコンテンツや、起伏にとんだ構成のコンテンツは避け、先の展開を知っていても世界観や展開を楽しめるコンテンツがオススメです。
②倍速・ながら視聴されないコンテンツを目指すアプローチ
「新しいドライヤー」や「推しのライブ」のように、普段の基準を大きく超える体験価値を提供し、ユーザーの注意を完全に惹きつける設計が重要です。
特にホラー映画やシリアスな展開は、余白や助走を含めて作品を楽しむコンテンツであることから、特に倍速・ながら視聴されづらく、興味を惹けるのではないでしょうか。
まとめ
「Z世代=効率至上主義」という表面的な定義付けは、私たちが日常的に抱えている「退屈への恐怖」や「常に良質な刺激を求めている実態」を見落とす原因になります。
時間をどう削るかという「タイパ」の視点から一歩踏み込み、ユーザーの精神的な空腹感をどう満たすのか。
それこそが、無数のコンテンツが存在する現代において、Z世代の心に深く刺さるコミュニケーションを生み出す鍵となるはずです。
本記事を通じて、新しいマーケティングの形を考えるきっかけになれば幸いです。
次回もお楽しみに!
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