良いクリエイティブは、良い情報収集から。
小嶋 一穂
こんにちは。日差しがだんだんと春めくにつれ、鼻がむずむずしている小嶋です。 今回は、普段私がクリエイティブプランナーとして働く上で、難しいなと感じることを踏まえつつ、クリエイティブ制作のとっかかりにしているものを紹介していきます。
広告業界で難しいと感じることのひとつに、自分の詳しくないサービスのクリエイティブを担当することがあるということが挙げられます。 担当経験のある業界や普段慣れ親しんでいるサービスであれば、まだとっかかりやすいですが、そうではない業種の担当になったときはちょっと大変です。 サービス理解に時間がかかったり、そのサービスを利用するユーザーの気持ちや悩みを理解するのに時間がかかってしまったりしますよね。
だからと言ってオリエンやサイトのLPなどコンテンツの情報だけでクリエイティブを作成し始めてしまうのはちょっともったいないです。少ない情報で見切り発車したクリエイティブは、どこかで行き詰ってしまったりするので、情報収集を日ごろから行っておくと引き出しが増えます。 そもそも業界や市場についての知識が少ないと、クライアントから「もっとうちの業界のこと知ってほしいのに、商品だけ見て広告つくっているなあ」といった印象を抱かれてしまいます。
そうならないように私たちプランナーは日ごろから情報収集を行っています。 調査方法や集める情報は、業界やサービスに合わせて変わりますが、ここで土台を作ってからクリエイティブの制作に入っていきます。 自分の知らないサービスや業界について、どうやって知識を深めていけばいいのかを、私が実際に行っている方法で紹介できればと思います。
大事な情報は「ネット/配信データ/リアル」の3つから
直近ですが、新しく美容コスメ業界の担当案件が増えました。 正直女子力枯渇気味で、普段メイクはするもののこだわりのメイクポイントもなければ、コスメオタクでもなければ、コスメブランドに詳しいわけでもなかったので、手の届く範囲から知識を増やす工夫をしました。 基本的にはオタク気質なので、情報収集方法は多岐にわたりますが、今回は大きく3つに分けて紹介します。 まずは、ネットの情報。
といっても未だにググって検索しておりますが…。 例えば美容系Youtuberやインスタグラマーの投稿を調べることで、再生回数の多さからどういった投稿が今ユーザーに好まれているかを知ることができます。 アイシャドウに関してはこういった投稿方法が多い、リップだとまた違う投稿方法がいいね数が多いなど、カテゴリ分けして広告用クリエイティブに要素を反映することもできます。
その他にも、ユーザーの声から拾えるメイクに対する悩みやニーズを調べたり、最新のコスメトレンドや、バズコスメを事前にキャッチアップしたりなどができます。
私はユーザー視点でクリエイティブがどう見えるのか、どう見えて欲しいのかを考える上で、ここに時間をかけることが多いです。 特にメイクは幅拾い年齢層で需要のあるものなので、各年代層に合わせたトレンドや悩みを抑えることで、ユーザーが欲しい情報と齟齬のないクリエイティブを作成することができます。
配信後の効果がわかるのはWeb広告の良いところですが、ついつい「良かったクリエイティブ」にばかり注目しがちです。実は、「悪かったクリエイティブ」と、「ターゲティングの中身」にもヒントがたくさん隠れています。
「クリエイティブを回してみたけど当たらなかったから、この訴求軸はダメだ。」の判断は勿体ないです。まずは悪かったクリエイティブの理由を深堀してみましょう。 例えば、バズっている「○○メイク」でトレンドにもなっているコンテンツを使用してクリエイティブを作成したが、広告の効果が良くなかった。
この場合の考察ですが、
A:バズっているメイン年代層(20代)と広告が当たっている人(中高生)の年代層が違った。
⇒ターゲティングの変更が可能か検討&提案
B:「○○メイク」は可愛いが、少し派手で中高生が学校にしていけるようなメイクじゃなかった
⇒大学生など派手なメイクをしやすい人にターゲットを絞る
C:特定のコスメを使用する必要があり、そのコスメが手に入りづらい
⇒プチプラで可能なメイク方法の紹介を行う
など、効果の悪いクリエイティブから新たな仮説を立てることができます。 こういった改善の余地を今一度検討して、なるべく訴求の幅を安易に減らさないようにしましょう。
ターゲティングについては、媒体ごとの細かい話はしませんがTwitterのキーワードターゲティングで良効果のキーワードがあれば、それを考慮したクリエイティブを作成したりもできます。ターゲティングの中身とクリエイティブを連動がしっかりとできていないと、意図したターゲットに広告が当たっていないという結果になってしまいます。※詳細は前回記事にて紹介 。
例えばPRするコンテンツが、商品であったり日常で使用するようなサービスであれば、実際に触ってみることも大事です。
よく私が行っていることとしましては、会社帰りや休日にふらふらっとPLAZAやらドラッグストアに行き、商品棚の配置を見ます。 “どのブランドのどの商品が一番目につく場所に置かれているのか”を見ることで、今企業が売り出そうとしている商品傾向や売れ筋の傾向が分かります。 また、欠品中のカラー番号「あ、このカラーいつもないな」と思ったら、ネットやSNSで検索してみて、「有名なYoutuberさんが動画投稿してるからかも」だったり「韓国の人気コスメシリーズの新カラーだからかも」と予想を立てながら、次につくるクリエイティブをほんのり考えておきます。
商品棚の配置は意外とすぐ変わりますし、常に置いてある商品とすぐ入れ替わる商品の傾向なんかも見えてきます。また、その商品を買っている客層を実際に目にすることで、自分が想定したターゲットがズレていないかの答え合わせもできます。
店舗以外でも、雑誌でこんな特集が組まれていたとか、TVの人気番組でこの商品が取り上げられていたなどから次に人気が出そうなものを予測し、クリエイティブに取り入れることもできます。 また、意外と役に立つのが身近な人に聞いてみることで、特に自分の年齢以外が対象の商品だったりは、その年齢に近しい人に意見を聞く方が、手っ取り早く確からしい情報が手に入ったりします。
普段はこういった情報を踏まえつつ、クリエイティブの提案や改善を行っています。 「ユーザーのこういった声が多いので」「店舗でこちらの商品の売れ行きが伸びているので」など、何を根拠にクリエイティブを提案しているかしっかりとクライアントの方に伝え、納得していただいたうえでクリエイティブの制作を進めます。こういった情報収集を行うのと行わないのでは、提案内容に対してのクライアントの納得度が違います。
一見クリエイティブプランナーの仕事とは離れて見えますが、提案の納得度を上げる情報収集は、クリエイティブの質にもかかわってきます。
情報収集を徹底する
正直広告のテクニック的な話ではなく、泥臭い日々の情報収集の話になってしまいましたが、私にとって案件を担当することは、そのコンテンツに関して誰よりも考え抜いてクリエイティブを作成することなのでその一例として紹介させていただきました。
私も新人時代に不動産業界、保険業界、金融業界など小難しい案件を担当したとき、先輩に「業界用語も分からない人に、お客さん信頼してもらうこと、ましてや相談を受けることは難しい。だから早くお客さんに頼ってもらえる知識をつけなさい。」と言われたことがあります。 それからは、四季報を読んだり日経新聞からその業界の記事を集めてみたり、日経株価を追ったり、先方から営業用パンフレットをもらって読み込んだりと、手あたり次第、情報収集を行いました。その結果、先方との会話がスムーズになったり、企業全体で抱える悩みを相談していただけたりしました。
まとめ
今Web広告ではPDCAを回すことが推奨され、常に検証と改善を行っていかなければなりません。そこには終わりがなく、一度良効果のクリエイティブを作成できても、すぐに飽きられたりして効果が悪くなっていきます。 広告を作り続けなければいけない状況下で、クライアントに納得してもらいながらクリエイティブを作成するのは、クライアントとの信頼関係を築くうえで大切なことだと考えます。情報収集によって新しいアイディアの引き出しが増えれば、改善提案の幅も広がります。
広告の効果やターゲティング面での効果改善に行き詰ったとき、何かクリエイティブがユーザーに刺さっていないと感じるとき、今一度コンテンツ周りの情報を見直すことで、良いクリエイティブが生まれるかもしれません。
もし、現在配信している広告クリエイティブに関して「担当者の業界とか商品の理解が浅いな…」「何を根拠に提案しているんだろう…」「いまいちユーザーに刺さっていないのでは」と感じたことのある方は、ぜひD2C Rまでお問い合わせください。
博物館・美術館などの制作者の背景や意図をくみ取った展示に興味を持ち、博物館学芸員資格を取得するも、制作者の近くで働きたいと広告代理店へ。広告戦略を立案するアドプランナーを経験後、バナーやランディングページの戦略設計、制作管理業務に従事。よりクリエイティブを多く制作し、自由度の高く挑戦できる環境を求め2018年にD2C Rに入社。趣味はフィルムカメラを片手に旅行に行くこと