最新のCookie規制の延期までの変遷をさらっとおさらい! ~未来を読み解く~
江藤 史雄
皆様、はじめまして。
P&D本部 ディレクション部マネージャーの江藤です。
「未来を読み解く」シリーズでは、デジタルマーケティングにおける最新情報/トレンドに対して、
今ある情報をベースに”考え抜いた未来”について、CANVASを通じて不定期に連載してまいります。
今回の連載では、”最新のCookie規制の延期までのデジタル広告の変遷を一気におさらい!”と題して、
デジタル広告の変遷というちょっと歴史めいた話から、6/24に延期の発表があったGoogle chromeの3rd party Cookie規制まで、
今後の広告会社としての対応はどう変わるのか?
といった点について語らってまいります。
この記事を読んでいただいた皆様にとって、”デジタルマーケターとして、
どのように顧客と向き合うべきか”考えるきっかけとなり、
少しでもありたき姿に近づける情報になれば幸いです。
デジタル広告の変遷を支えたCookieとID
デジタル広告は、4マスとの違いとして上げられるのが
”ターゲティング精度の高さ”や”効果計測/分析の即時性”です。
遡ること2000年ごろからインターネットやECの普及が始まり、
そして2010年ごろには”メディアミックス”や”統合メディアプランニング”といった
広告に関わる事のある方なら耳にしたことのある言葉が生まれたように、
デジタル広告費は急速に伸びていきます。
そのデジタル広告における進化/成長を支えていたのがCookieや広告IDです。
ユーザーの趣味趣向や行動ログに合わせて訴求するメッセージや表現が配信でき、
商品を求めてるユーザーに届くといった夢のような広告としてデジタル広告は注目され、
広告代理店だけでなく広告主/媒体社/ベンダーといった業界全体で盛り上がりを見せていきます。
変化する個人情報に対する考え方
しかし2017年ごろから、個人情報に対しての考え方が、
”ユーザーが意識していない所での利用されている状況”から、
”ユーザー本人が自分でコントロールすべきモノ”というように
世の中全体でどんどんセンシティブな考え方が主流となり、
大手プラットフォーマーでも情報利用を規制する動きが始まります。
ブラウザやアプリの仕様上できてしまう「様々な情報を抜き取ること」に策を講じるべく、
GoogleやAppleでは情報の悪用を防ぐ意味でもブラウザやOSなど、様々なアップデートが進んでいきます。
その頃から大手プラットフォーマーがアップデートしては、
デジタル広告に携わる各社が計測にむけた回避策や抜け道を講じ、
その抜け道を大手プラットフォーマーが再度アップデートで規制する、といったイタチごっこが始まりました。
その一方で、デジタル広告費の拡大とともに、
大手プラットフォーマーの動きがデジタルマーケティングに携わる多くのプレーヤーに大きな影響を及ぼす時代に突入します。
実装されたAppleのATTと、延期されたGoogleのCookie規制
AppleとGoogleというエコシステムを提供する最大手は、これまで様々なアップデートを繰り返し、
そして2021年、いままでアンチトラッキングにあまり関心がなかった
デジタルマーケティングに関わる方々の間でも、一気に関心が高まる状況が訪れました。
その一つが、Appleの2021年4月27日のアップデート実装です。
今回Appleでは以下のようなアップデートがありました。
——————
ブラウザでは
「Cookieのローカルストレージへの制限強化」
(3rd Party cookieの利用制限により、オーディエンスターゲティング不可に)
アプリでは
「利用者の同意がない場合はIDFAが取得不可」
「広告配信のための他識別子について使用停止」
(同意率によっては、オーディエンスターゲティングが不可に)
——————
なお上記アップデートによる影響については、
以下のCANVAS記事にもまとまってますのでそちらもご参照ください。
そしてデジタル広告に関わる方々の関心の高まりもあり、
2022年までに実装予定といわれていたGoogleの”3rd Party Cookie撤廃のアップデート”のポイントとされる
FLoC※やFLEDGE※などの個人情報を保護した形でのCookie代替技術や、
ブラウザ上でのオークション技術に関する記事を目にする機会が増えてきていました。
ところが2021年6月24日(木)、
”3rd Party Cookie撤廃のアップデート”は2022年までに実装予定”としてGoogleから、
”2023年中盤~終盤の実装予定”という計画延期が発表されました。
つまり、この延期期間の間で各社がどのような対応をとるか、が非常に注目となります。
※FLoC:個人の閲覧情報の企業側の取得を防ぐとともに、個人の特定を防ぐとされる。
ブラウザ上でユーザーをコホートと呼ばれる数千人単位のグループに匿名状態でグルーピング化し、
広告配信主が配信先として選択できるようにする。Federated Learning of Cohortsの略。
※FLEDGE:Cookieの代替技術とされる。従来アドサーバーで行われていたオークションを、ブラウザ上で広告オークションを実行する。
これによりオークション時のデータを制限しプライバシーを保護するという考えにより開発されている。
▼『FLoC』や『FLEDGE』がどんな手法なのか、こちらの記事をご覧ください。
これからも変わらないこと
この延期は、なにも朗報でありません。 それは何故でしょうか?
アプリでは、厳格な個人情報保護のもと独自のソリューションが乱立すること。
ブラウザでは、プライバシーを保護した形でのターゲティングの両立を中心に進むこと。
そして今後もデジタル広告ではさらなる変革が進み、 個人情報の規制が強化されていくことには変わりがないからです。
つまりそのような未来に対し、 以下のような情報の変化を少しでも早くつかみ、 チャレンジしていくことが求められていきます。
- パブリッシャー 1st party データのターゲティング可視化
- コンテキストによるパーソナライズ化(新たなメディアポートフォーリオに合わせた戦略、クリエイティブPDCAの深耕)
- cookieに代わるターゲティング手法の開発/確立(ID認証、メールアドレスなど)
そのために広告主、ベンダー、媒体社、代理店といった デジタル広告に携わるプレーヤーとの今まで以上の連携強化が求められてきます。
D2C Rとしても、 業界全体として取り組むべきこの課題に向き合うべく、
まず媒体社と関係を強固にする専門組織 ”Media Partner Sales Team(通称MPS)”を立ち上げました。
メディアでの事例創出/β版の実装などだけでなく、 広告主に向き合うパートナーとして、
媒体社と同じ目線で業界全体をより良くしていくために、 媒体社とともにアプローチ手法や新たな施策を考えてることで、
今後も出てくるであろう新たな問題を解決する糸口になると考えております。
未来を読み解くシリーズでは、
・媒体社のアップデート/リリース情報の裏側を解釈
・媒体社と弊社MPSの連携強化により創出した事例紹介
といった内容も今後も語らってまいります。
引き続きこの業界全体で取り組むべき課題に、 弊社としても向き合ってまいります。
▼次の記事はこちら
Cookie規制の変遷が分かった上で、実際にGoogleが提唱するCookieに代わる技術、
『FLoC』や『FLEDGE』は一体どんな手法なのか?シンプルにお伝えします
2015年に新卒でD2Cに入社。入社2か月後に電通デジタルビジネス局へ出向となり、約2年間媒体営業として従事。その後、電通デジタルへ出向し、健康食品系大手クライアントのデジタルプロモーション責任者を担当。 2020年4月にD2C Rへ異動し、パフォーマンス向上や提案力強化を主目的とした精鋭部隊として注力案件のグロスアップに向けたサポートを担当。社内向けの勉強会を定期的に実施。2020年10月より運用部マネジャーに就任。休日は子育てとテニスに時間を費やす。